閉塞感にローリングソバット

文字数 497文字

男は一歩前に踏み出そうとした。しかしその瞬間男は頭をぶつけた。
咄嗟に右手で壁に手をついた男はよろめいてそのまま後ろに一歩下がろうとした。
すると今度は背中を壁にぶつけた。その反動に驚いて男は左手でまた壁に手をついて身体のバランスを保った。

体勢を安定させた男ははたと気付く。自分が今とてもとても狭い空間の中に押し込められていることに。まるで出荷を待つ箱詰めされた野菜たちのようだ。
これじゃずっと直立して立っているしかやりようがない。
ということで直立したまま男は考える。

いつから俺はこんな狭い空間に押し込められているのかと。
それは昨日からだったような気もするし2ヶ月前からだったような気もするし、あるいは3年前からだったような気もする。

いつからこんなことになったのだろう。
何かがおかしい。

男は意を決して前の壁に頭突きをしてみた。壁は「バコン」と音を立てて崩れた。頭が痛かったので今度は右の壁を拳で殴った。拳も痛かったので次に肘で左の壁を突いた。最後に身体を少し捻って「ローリングソバット」の要領で後ろの壁を蹴破った。

四方の壁は綺麗に無くなった。
男は思った。
俺は自由だ、と。
視界はどこまでも続いていた。
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