トモダチ ノ ワ

文字数 496文字

「以上が私の政策になります。ご静聴ありがとうございました」
 ズイデベルノ公国の新人議員のUが話を終えると彼を囲む聴衆は大きな歓声を挙げた。その様子を冷めた目で見つめる集団がいた。古参議員の一派だ。

「いや、大した人気ですなぁ」
 一派のボスのNが言った。
「全くですわね」
 同じ一派のSも続く。
「いやはや、ですね」
 一派の中では一番の新顔のDが2人に(なら)う。

「全く『我々』に挨拶もなしに勝手なことをされても困りますな」
「ホントに、最近の新参者(しんざんもの)は礼儀を知りませんわね」
「いやはや。ただ、いつまで続きますかね」

 Dが横目で言うとNがほくそ笑む
「全く、彼みたいな新参は『世の道理』が分かってないな」
「彼は『トモダチ』ではない、ですもんね」
「この国の法律は我々『友達の輪』のメンバーが提出した法案をお互いに賛成しあってそれぞれの実績として積み重ねている、という構造を知らんのですね」

「おいおい、それじゃ『我々』が『互助会』みたいじゃないか」
「私達はあくまで『この国の為』に働いているんですからね」
「建前上は、ですね」

 程なくUは議員を辞めてズイデベルノ公国を去った。
 ズイデベルノ公国の人口は減り続けている。
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