創作墓場

文字数 500文字

―ここはどこだ?-
 目を覚ました江井戸川二ツ目(えいどかわふたつめ)は辺りを見回した。そこは真っ暗で何もない空間…まるで宇宙空間のようだった。
 そんな周囲の様子を確認して彼は確信した。

―これは夢である、と-

 なぜなら彼は今まさに迷宮入り間違いなしと言われている殺人事件に挑んでいる最中の世界でも指折りの名探偵だからである。彼は持ち前の洞察力と推理力、そして直感で事件の謎をほぼ解いていた。

 早く眼が覚めれば良いのに。
 そう思いながら彼はあることに気付く。何もないと思っていた空間に何かが漂っていることに。
 
 始めのうちは一つ二つだったそれは気付けばどんどん数が増えていく。
 何だ、これは。

 意を決して江井戸川はそれらに近付いてみた。それらにはそれぞれ名前がつけられていた。そしてそれらはすべからく…物語のようだった。
 
 最近流行のやたらタイトルの長い異世界転生ものや恋愛ものなど中身は様々だ。
 そしてそのどれもが完結することなく未完のまま投げ出されていた。

 その様子を見て江井戸川は気付いた。何せ彼は優秀な探偵なのだから。

-自分も打ち棄てられた作品の中の登場人物であることに-

 彼が事件の真相に辿り着くことは

 永遠にない。
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