ささいな宣戦布告

文字数 496文字

「それでは会議を始めます」
 Q部長の音頭で今日の会議が始まった。
「では早速本日の議題を…」
 配られた資料にP氏は目を落とす。P氏が勤めるのは大手の製菓会社。折からの原材料の高騰によりP氏の会社でも製品の値上げや容量を減らすなど様々な対策が求められていた。

「この『二種のアソートパック』なのですが…」
「二種のアソートパック」とはわが社の看板商品の「えのきの山」と「ごぼうの里」を小分けにした小袋が10袋ずつ入っている人気商品だ。

「前回の会議で決まった通り値段据え置きで内容量を一袋減らして19袋にする、という話ですが…」
 Q部長は続ける
「どちらを9袋にするかを今日は決めたいと思います」
 言葉に続いてQ部長は出席の面々の顔を見るが誰もが目を伏せた。
「えのき」も「ごぼう」も甲乙つけがたい人気を誇るしそれぞれに固定ファンがいる。軽々しく決められる問題ではない。

 重い沈黙の中、意を決したP氏が口を開く
「お客様に投票で決めていただく、というのはどうですか?」

 会社の方針として投票が行われることになった。

 だがこのとき、P氏は知らなかった。
 それがいずれ国を二分する永く大きな分断の発端となることを
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