危険な胎動

文字数 500文字

「…ということなんです」
 決め台詞と共にIは数百を超える観客に、さらにその向こうにいる何万を超える視聴者に向けて意識して目線を送った。

 本番が終わり自宅に帰宅したIは先ほどまで自身が出演していた番組の感想をSNSで調べていた。

「今日もIさんの分かりやすい説明であのニュースのことや歴史が良く分かりました」

 そんな感想が溢れかえっていた。Iは密かに口角を上げた。
 計画通りだ。

 Iはニュースを解説する番組に出演するコメンテーターだ。その爽やかな風貌と明瞭な口調と分かりやすい解説で人気を博している。

 真面目なIは自身が解説するニュースを様々な角度から眺め、またバックグラウンドを調べて正しい情報を発信するように努めていた、最初の内は。

 おかげで番組は回を重ねるごとに視聴者を増やしていた。

 Iは徐々に自信が解説するニュースにウソを混ぜる様にしていった。自身の思想を少しずつ込めるようにしていったのだ。

「タイパ」という言葉がある。
 本来ならIが語った言葉の裏を取らなければいけないはずがIの言葉こそが情報の裏付けである、と時間に追われる人々は思っていた。

よしよし、順調だ。
流れる感想を見てIはほくそ笑んだ
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み