6-8x @ 21:49分

文字数 500文字

「野球始まった?」
 ソファーに座り21時のニュースを見ている私の上から声が聞こえる。
「まだ天気予報」
 首だけを上向けて彼を視界に捉える。上半身裸で下はいつものジャージ、バスタオルを肩にかけて髪はビチャビチャだ。

「さて、次はスポーツ。まずはプロ野球から」
 アナウンサーのそんな声と共に画面が切り替わる。

「始まった」
「始まったね」

 私達は画面に目を向ける。1試合、2試合と試合のダイジェストが流れるが彼の贔屓のチームの試合ではない。そして、彼の贔屓チームの番だ。

「1点を先制された3回、一死満塁(ワンナウトまんるい)で新外国人の満塁ホームランで5-0に。…」

 そこで私の頭上から舌打ちが聞こえ足音が遠ざかっていく。
「最後まで見ないのー?」
「髪、乾かしてくる!」
 すぐに洗面所のほうからドライヤーの音が聞こえてくる。
 私は画面を見続ける。

「あ、逆転したよー!」
 するとドライヤーの音が消えて足音が近づいてくる
「本当!?」
「サヨナラホームランだって」
 画面は次の試合に移っていた。

「とりあえず…髪乾かしてきたら?」
 半乾きの彼に私は言った。彼は両方の拳を天にかかげて洗面所に戻っていた。
 また、すぐにドライヤーの音が聞こえてきた。
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