今日は脚の日

文字数 500文字

 雲一つない空がどこまでも広がるような、そんな1日だった。気温もここ数日とは打って変わり、まるで季節を一つ巻き戻したような暖かさで、控えめに言って文句のつけようがない、そんな気候だった。

 街行く人達もその快適な気候につられ心なしか足取りが弾んでいるように見えた。スーツを着たサラリーマンは胸を張り、ベビーカーを押す母親の足取りは軽く、ベビーカーの主役はニコニコとご機嫌で笑顔で周囲に手を振り、その姿にゲートボールの道具を持つて歩く高齢者集団はメロメロになる。

 だれもが浮き足立つ、そんな1日だった。

 しかし、そんな中を一人しっかりと地に足を着けて歩く男がいた。男はどこか浮かない顔をして目的地へと向かっていた。その姿は周囲の光景と比較してやや浮いていた。

 男が浮かない顔をしている原因はただ一つ。

 今日は脚トレの日だからであった。脚トレとは文字通り脚のトレーニングのことである。男は週に4回トレーニングをしにジムに通っている。その4回でトレーニングする部位を分割していて今日は脚の日なのだ。バーベルにいくつも重りをつけてスクワットをしなければいけないのだ。

 まだ痛みのない足で男はジムに向かっていた。
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