鼻下攻防戦

「映画何時から？」
「15時…24分かな」
「じゃあ…14時過ぎに出ればいいかな？」
「そうね」
「じゃあボチボチ支度しなきゃだね」
「そうね」

「準備出来た？」
「バッチリ」
「今日の映画って誰が出るんだっけ？」
「あれあれ…あの人…アン・ハサウェイ！」
「そっか」

「ところでさ…」
「…何？」
「その髭で行く気？」
「…え？」
「髭ボーボーだけど大丈夫そ？」
「え？」
「できれば剃って欲しいのだけれど」
「お気に入りなのだけどダメ？似合ってない？」
「うーん、顎髭は良いんだけど鼻下のチョビ髭みたいなのが好きくない」
「戦国武将を目指して伸ばしているいるのだけど」
「今は令和だし」
「確かに」
「じゃあ、鼻の下は剃って顎髭は整えようか」
「うーん…」
「だって鼻の下に生えてるとチクチクするし」
「うーん…」
「ほ、ほら！アン・ハサウェイも『剃って欲しい』って言ってるよ！」
「ハサウェイが？」
「そう、ハサウェイが！」
「じゃあ、剃るか」
「やった！」

「剃ったで」
「うん、バッチリ！」
「じゃあ、行こうか」
「うーん…」
「何？」
「鼻下がツルツルだと何かバランス悪いね…顎髭もいっとく？」
「映画間に合わなくなるから行くで！」
「はーい」