自由鳥

文字数 470文字

♪どこかに答えがあるのなら

 もう何回、いや何百回聞いたかも分からないその曲は今日もサビの箇所を迎えた。
 かつてこの曲を歌っていたグループのことは誰もが知っていたはずだがそのグループが「解散」という選択をしてから気付けばそれなりの年月が経っていた。
 今の中学生、小学生はひょっとしてもうそのグループのことを知らないかもしれない。それくらいの時間が経っていた。

♪いつか飛び回ること忘れてしまうよ

 曲は続く。
 この曲を聴くたびに俺は今のこの現状が彼らが出した「答え」で彼らは「飛び回ることを忘れてしまった」のかと淋しい気持ちになる。
 でも時間が経つとこの曲を聴いてそうやって「寂しい」と感じる感覚も少しずつ薄れていく。
 時間とは残酷なものだ。
 あるいはもっともっと時間が経てばそんな感覚は完全に消え失せるのかもしれない。
 例えば6000日くらいの月日が経てば。

 ♪君との距離も寂しい時間も回り続けるからいいんだと思います

 曲は続く。「寂しさ」を越えてやっぱり良い曲だと俺は何百回目の同じ感想を抱く。
 俺の感性はまるで自由に飛び回る鳥のようだった。
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