Like a Star NewOne

文字数 493文字

「やった!」
 エヌ氏は声をあげた。ついに世界を変える発明品を開発したのだ。それはとんでもないものだった。エヌ氏は早速電話をかけた。

「はい、T社のエフです」
 T社はかつてエヌ氏が勤めていた会社でエフは部下だった。変人と言われたエヌ氏はT社を数年前に追い出されていた。

「エヌだ」
「ああ、何の用ですか?」
 こちらが名乗った途端、エフの声には侮蔑の色が混じる。
「とんでもないものの発明に成功した、ぜひ見に来てくれ!」
「どんな?」
 弾むようなエヌ氏の言葉とは裏腹にエフの声はどこまでも冷めていた。
「とても言葉では説明できん。ぜひ見に来てくれたまえ」
「画像や動画データをこちらに送ってください」
「そんなことをしたら外部に情報がもれてしまう」

 その時、ふーと電話口から小さなため息がしたのをエヌ氏は聞き漏らさなかった。
「申し訳ないですがあなたのために時間や経費を使うことは出来ません、失礼します」
 そんなエフの無情な宣告とともに電話は切られた。
 音のしなくなった受話器をしばらく見つめていたエヌ氏はその受話器を元の場所に戻した後、今し方やっと完成した発明品を地面に叩きつけた。
 発明品は粉々になった。
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