旅するMOTH

文字数 498文字

 外では相変わらず激しい雨が降りしきる中、眼に映る景色はものすごいスピードで移ろっていく。ここはどこなのだろうか?そしてどこまで行くのだろうか?

 不意に景色が止まる。「電車」と呼ばれる今私が乗っているものが止まったからだ。
 この「電車」というものは先ほどから規則正しく止まる、そして動く、という動作を繰り返している。

 扉が開いた瞬間「ザーザー」というノイズが聞こえてくる。雨だ。全ての元凶となった忌まわしい雨だ。

 ほんの数時間前まで綺麗に晴れ渡っていて、その陽気な気候に誘われてフラフラと飛び立ったのもつかの間、空模様が変わり天から水滴が大量に降ってきたのだ。

 羽根が濡れるのを嫌った私がその雨を凌ぐために飛び込んだのがこの「電車」という空間だったわけだ。

 突然の雨に戸惑い窓にしがみついていた私は今では見知らぬ風景に戸惑って変わらず窓にしがみついている。

 これ、帰れるかな…

 不安に思う私の頭の中を仲間の顔が駆けていく。
 
 帰りたいな…

 どれくらい、そのまま時間が流れただろう。
 永遠とも思える絶望の中で突然、「電車」はそれまでとは反対方向に動き出した。

 帰れる、窓にしがみつく脚に力を入れた。
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