第二話 memory (2)

文字数 889文字

 拝啓 滝川 一颯様

 街はクリスマス一色で、イルミネーションがとてもまばゆく感じられます。すっかりとマフラーが必要な季節になりましたけど、颯くんはいかがお過ごしですか。
 私はこの二ヶ月は少しバタバタと過ごしていました。
 その理由はいずれお話しますね。
 キラキラと輝くイルミネーションを見て、思い出すのは、やっぱり颯くんとのクリスマスです。
 去年はお昼だけ、一緒に過ごしましたね。
 クリスマスでも私達には定番の、未来と恋坂。
 あの日のマスターのほかほかの玉子サンドがとっても美味しかったのを覚えています。
 マスターはお元気でしょうか。
 颯くん、あれから未来には行きましたか。
 まだ、でしょうか。
 ごめんなさい、ちょっと話が反れましたね。
 クリスマスの話でした。
 あの日の恋坂の映画はクリスマスらしからぬ映画でしたね。
 ニコラス・ケイジの『コンエアー』。
 ニコラス・ケイジと言えば『ナショナル·トレジャー』のイメージが私の中ではとても強かったけれど、あんな野性味溢れる役も演じていたんですね。
 颯くんがとっても、作品に興奮していたのをいまでもよく覚えています。
 私達は恋坂でばかり映画を見ていたから、いまの旬の俳優さんを知らずに、昔の俳優さんばかり詳しくなっちゃいましたね。
 でもニコラス・ケイジはそんなに古い俳優さんじゃないですね。
 私、失礼ですね。(笑)
 颯くん、あれから恋坂には行きましたか。
 オーナーは元気にしているでしょうか。
 私ったらマスターやオーナーのことばかり心配してますね。
 でもお二人はもう高齢ですから、私、とても心配なんです。
 颯くん、いつ未来に行きますか。
 そうですよね。
 私がそうなるように仕向けてしまったのに、いまさらなにを言っているのかとお思いでしょう。
 颯くん、あなたに逢いたいです。
 あなたからの便りを待つ、わがままな私をあなたはどう思うでしょうか。
 いえ、便りはきっと無いのでしょうね。
 時間がそれを証明している気がします。
 それでも私はあなたと言葉を交わしたい。
 すみません。
 今日はここまでにします。
 またお便りしますね。

 かしこ

 新城 夏帆

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