第二話 memory (4)
文字数 697文字
拝啓 滝川 一颯様
蝉の声がよく聞こえる季節となりました。今年はとても暑くなるそうです。健やかに過ごされていらっしゃいますか。東京の蝉はとても声が大きいです。福岡の蝉はいかがですか。
高校はどうでしょう。
もう慣れましたか。
颯くんは高校でも陸上を続けているのでしょうね。
あなたの走る姿は今でもまぶたを閉じると鮮明に浮かびます。
だって、私が一番好きな颯くんですから。
走るあなたは、とても魅力的です。
自分が言っておきながら、とっても恥ずかしいです。(笑)
できることなら、その姿を一番近くで見ていたい。
そう思う私は、とてもわがままなのでしょうね。
東京に来て、もう一年以上が経ちました。
でも、あなたのことを忘れた日は、一日だってありません。
いえ、日が経つごとに、あなたへの想いは、ますます大きくなっている気がします。
颯くん。
逢いたいです。
わがままだともわかってます。
あなたを傷つけたこともわかってます。
でも、それでも私はあなたを愛しています。
そうですよね、こんなことを言っても信じてもらえるはずもありません。
颯くん、未来に行って欲しい。
行って、マスターに会って欲しい。
勇気が無い私は、こんな方法しか取れませんでした。
とても、あなたに本当のことを言う勇気は私にはありませんでした。
それとも勇気を振るうべきだったのでしょうか。
告白より、とても勇気がいることです。
まだあなたに本当のことを語る勇気は、私にはありません。
でもいずれ打ち明けなければならないのでしょう。
ごめんなさい。
今日はここまでにさせてください。
またお便りしますね。
かしこ
新城 夏帆