epilogue jinx (3)

文字数 752文字

「ミストレスはいくつなの?」

 もお陸くん、女性にそれは失礼よ。でもミストレスってなに。

「あら、よくそんな言葉知ってるわね」

「陸くん、なにそれ?」

「ん?喫茶店のマスターって男性の呼び名で、女性の場合はミストレスって言うんだよ」

「若いのによく知ってるわね~博識なのね~」

 これだ。無礼千万で無神経でわがままなくせに、成績だけはいいんだから。

 もう~、こいつ誰かなんとかして~(泣)

「ちなみに私は78よ」

 と、ミストレスはにっこりと笑って年齢を公表した。

「って78!?嘘でしょ!?」

 しまった……思わず声に出てた。

「あら~そんな歳に見えない?」

「見えませんよ!わたしてっきり、うちのお母さんと同じくらいで50歳くらいかと思いました」

「まあまあ、そんなに若く見られるなんて嬉しいわ~」

 お世辞じゃなくて、本当にそのくらいの年齢にしか見えない。なにか特別なサプリメントがあるのかしら。

 ひょっとしたら、この前の配信で観た肌退化を止める手術とかかも。

「なんか秘訣があるの?」

 相変わらず無礼な口の聞き方だけど、いまは許そう。わたしも知りたい。

 ミストレスは、そうねぇ、と前置きして少し頬を染めてこう言った。

「恋をしてるから、かしら」

「「恋?」」

 二人してハモってしまった。

「そう。あなた達が高校生なら、それよりもっと前ね。私は12歳の頃から、ずっと一人の人に恋してるの」

 60年以上も一人にずっと恋をしてるの。すっごい、ロマンチック~。

「その人と結婚もしたんですか!?」

「ええ。いまも毎日『愛してるわ』って言ってるわよ」

「わぁ、いいなぁ!」

 すっごい!甘い!甘々だよ~!

 うらやましい~。

 そういえば、わたしは陸くんに言ってもらったことがない。ああ落ち込むなぁ~。

「さぁ、じゃあ座ってちょうだい。なにがいいかしら?」
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