第18話

文字数 957文字

朝日がさし始めるころ、心地よい眠りから目を覚ましたカスウィザードは、地平線の向こうから人影がゆっくりと、こちらに向かって歩いてくるのに気付いた。

彼がじっと見つめていると、パックが起きだして、彼もその人影に気づき、ぎょっとしてカスウィザードを見た。「しっ」と唇に指を立てるカスウィザード。重苦しい沈黙の中、人影は次第に大きくなってきた。

その者の姿は、朝日の逆光で、人の頭をした大きな鳥のように見えた。翼があるように見えた。

やがて彼らの前に姿を現したのは、初老の男の顔をした、人面の大烏だった。

漆黒の羽を片方だけ気障に広げて、大烏は自己紹介をした。

「お初にお目にかかる。私はこの先の館に住まうスフィンクス様のしもべで、モームと申します。あなたがたは我が主に何か用でもおありか?」

カスウィザードは言った。

「貴君のご主人のことは、不幸にしてあまりよく知らないのだが、ただ、知恵の怪物という噂を聞いたことがある。ぼくはこう見えて昔名門魔法学校をお受験した事があるほどの勉強好きだったんだ、それで知恵比べとかそういうのには、いまも興味があってね、一度どんなものか手合わせ願いたいと思って来たんだ」

大烏は人面をのけぞらせて笑った。

「いかにも。我が主は知恵比べが好きでな。それに退屈もしておる。小僧、お前の目ん玉をくりぬいてやろうと思ってきてやったんだが、主の楽しみをむざむざと奪うのも野暮なこと。せいぜいお前の浅知恵を披露するがいいぞ」

そう言うと大烏は両方の翼を広げ、わざとカスウィザードたちに迷惑なように砂埃を立てて飛び去った。

「なんだありゃ。スフィンクスには、ずいぶん変な子分がいるなあ」とパック。

「気味の悪いおっさんだ」とカスウィザードも言う。「ただ、一つ分かったことがある。うまく知恵比べに持ち込めば、スフィンクスの油断を誘えるかもしれないってことだ」

そうだな、と真面目に同意するパック。

それから彼らは、一日かけて砂漠を横断した。そして砂漠で四日目の夜を迎えた。夜が明け、再び歩き出し、昼頃には、平たい石を敷き詰めたすり鉢状の一帯に足を踏み入れていた。

そのすり鉢の底に、石造りの豪勢な館がそびえていた。カスウィザードは言った。

「とうとう着いたぞ。あれがスフィンクスの館だな」その声は緊張のためか恐怖のためか、震えていた。
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登場人物紹介

剣士カスウィザード  元魔法使い志望、元おぼっちゃま。現在は貧乏剣士(駆け出し)。駆け出しの分際で、ドワーフの名工キリクの手になる名剣『雷神の剣』を、喉から手が出るほど欲している。


美女タニア ?


魔導士ポナン 悪道に落ちた、元大魔法士

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