第7話

文字数 995文字

小人族の王、パックは、図書館から解放された久々の夜を、夜ふかしという形でお祝いした。そして次の日の朝、というか、昼過ぎごろ、目覚めてすぐ、新米剣士カスウィザードの姿を探した。カスウィザードは食堂の床に地図を広げ、なにやら熱心に書き込みをしている最中だった。

「これはこれは剣豪殿。探しましたぞ。して、なにをしておられるやら?」と、空中から声をかける(パックは浮遊の術を使えるのだ。)
「スフィンクスの館までの距離を測定しているんだ。・・・俺の足だと、五日の行程だな。いまから準備をしようと思う。まずは、水だ。一日に2リットル飲むとして、行きかえり十日分、20リットルの水が必要だ。飯は保存食で何とかする。あとは、毛布だな。水を入れる革袋は、うちの倉庫に転がってるかもしれない。水を運ぶ運び手が要る。町でロバを借りよう(そうなると、ロバの餌も調達せねばならんな・・・)。」
そう言うと、カスウィザードはてきぱきと地図を片付け始めた。偉大なる小人の王パックは、ちょっとあっけにとられてそれを眺めていた。

母親に頼んでパックの遅めの朝食を用意してもらった後、カスウィザードはレンタルするロバを探すために一人で町に出た。行き先は商業区。町々を往来する隊商のための、荷を運ぶ生き物を見るためである。

王都アレクサンドリアは、王宮のある行政区を中心に、四つの区画が東西南北、輪を描くように存在している。王宮の南部には、飲食店や歓楽街、レジャー施設などが立ち並ぶ遊興区。西には住居がひしめき、ナダンをはじめとした教育施設が点在する、住居区。そして王宮の東側には東部大公園があり、王宮の北側に位置するのが、商業区である。

住居区と商業区を結ぶ道は澄んだブルーの石で舗装されており、この道は別名、『勤しみの道』と呼ばれている。勤め人どもの、悲喜こもごもの汗と涙を吸って、いよいよ冴えた青を呈する、と噂されていた。

商業区の入り口近くには、かつてカスウィザードの父ドスコニルが構えていた店がある。元は材木を扱っていたのだが、今は人手に渡って、ポリマーをはじめとする新素材を盛んに商っているらしい。複雑な感慨を抱いて、それをちらりと見やり、カスウィザードは商業区の奥へと進んだ。

市場からさらに奥に進むと、土ぼこりがあたりに舞い始め、都市と都市を行きかう隊商たちの姿が見えてきた。そしてそこには、荷を運ぶ生き物たちの姿もあった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

剣士カスウィザード  元魔法使い志望、元おぼっちゃま。現在は貧乏剣士(駆け出し)。駆け出しの分際で、ドワーフの名工キリクの手になる名剣『雷神の剣』を、喉から手が出るほど欲している。


美女タニア ?


魔導士ポナン 悪道に落ちた、元大魔法士

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み