第9話
文字数 959文字
カスウィザードは、青く輝く『勤しみの道』をロバを連れて歩いて家路についた。ロバは歩く時、「ふんす」「ふんすっ」と鼻から息を出して、逞しく元気なところを見せてきたので、カスウィザードは自分の選択に自信を持った。
その、自信が芽生えてきた頭で、スフィンクスとの知恵比べに使う謎かけをいくつか考えてみた。
「音もなくやってきて、鳥よりも素早く飛び去る。絶対に必要なものなのに、なんで必要なのかは誰にもわからない。多くの時間を費やして、生き物はこのものにふける。このものを非常に好む人間もあるが、そういう人は怠け者呼ばわりされたりもする。このものとは何だ?」
「眠りだ」
「影であり、鏡に映った像であり、生きていくうえで絶対に必要なものでありながら、必ずしも得られる保証はどこにもない。このもの無くして一生を生きる定めを負う者すらいるだろう。このものとは何だ?」
「ともだち」
知恵比べというからには、一方的に向こうからの問題を解くだけではなく、こちらから謎かけすることもあるのではないか、と漠然とカスウィザードは思った。なんせ情報収集に失敗したので、はっきりとしたことが何もわからないのだ。
家に着くと、食卓でパックと母親がお昼ご飯を食べていた。ロバは、家と倉庫の間の中庭に放した。
カスウィザードと母親が暮らす家は、元は使用人たちを住まわせていた建物だ。旧ドスコニル邸は、とっくに人手に渡ってしまった。彼らに残されたのはこの建物と倉庫と、いくつかの家具類だけである。ただ、倉庫の中にはまだ比較的使える物も残されているかもしれない。食料やランプを入れる、ずだ袋くらいはあるだろう。
そう考えて、カスウィザードは倉庫のカギを開け、久しぶりでその中に入った。倉庫の壁には蛍光亀の甲羅が使われており、ぼうっと輝いている。彼はめぼしいものを探し当てた。
ずた袋、水を入れるための皮袋、それからランプとロープと、まだ使えそうなナイフ一本である。なんと、奥には、ロール状に丸められた干草までいくつか転がっていた。パックがやってきて、わざとらしく口笛を吹いて見せた。「ひゅう、やるねえ。持ち物だけはいっぱしだ」
「ああ。持ち物だけはな。だがこれで」
と一旦言葉を切り、カスウィザードが根暗の本性をむき出しにしてくすくす笑い始めた。
『雷神の剣は俺のものだ!!』と。
その、自信が芽生えてきた頭で、スフィンクスとの知恵比べに使う謎かけをいくつか考えてみた。
「音もなくやってきて、鳥よりも素早く飛び去る。絶対に必要なものなのに、なんで必要なのかは誰にもわからない。多くの時間を費やして、生き物はこのものにふける。このものを非常に好む人間もあるが、そういう人は怠け者呼ばわりされたりもする。このものとは何だ?」
「眠りだ」
「影であり、鏡に映った像であり、生きていくうえで絶対に必要なものでありながら、必ずしも得られる保証はどこにもない。このもの無くして一生を生きる定めを負う者すらいるだろう。このものとは何だ?」
「ともだち」
知恵比べというからには、一方的に向こうからの問題を解くだけではなく、こちらから謎かけすることもあるのではないか、と漠然とカスウィザードは思った。なんせ情報収集に失敗したので、はっきりとしたことが何もわからないのだ。
家に着くと、食卓でパックと母親がお昼ご飯を食べていた。ロバは、家と倉庫の間の中庭に放した。
カスウィザードと母親が暮らす家は、元は使用人たちを住まわせていた建物だ。旧ドスコニル邸は、とっくに人手に渡ってしまった。彼らに残されたのはこの建物と倉庫と、いくつかの家具類だけである。ただ、倉庫の中にはまだ比較的使える物も残されているかもしれない。食料やランプを入れる、ずだ袋くらいはあるだろう。
そう考えて、カスウィザードは倉庫のカギを開け、久しぶりでその中に入った。倉庫の壁には蛍光亀の甲羅が使われており、ぼうっと輝いている。彼はめぼしいものを探し当てた。
ずた袋、水を入れるための皮袋、それからランプとロープと、まだ使えそうなナイフ一本である。なんと、奥には、ロール状に丸められた干草までいくつか転がっていた。パックがやってきて、わざとらしく口笛を吹いて見せた。「ひゅう、やるねえ。持ち物だけはいっぱしだ」
「ああ。持ち物だけはな。だがこれで」
と一旦言葉を切り、カスウィザードが根暗の本性をむき出しにしてくすくす笑い始めた。
『雷神の剣は俺のものだ!!』と。