第21話

文字数 665文字

カスウィザードは、早鐘を打ち始めた心臓をなだめようと深呼吸を繰り返した。それが功を奏したのか、だんだんと彼も落ち着いてきた。すると、『非道い事をする為に、感じる方の心臓を眠らせるとは、なるほど、頭脳派だけあるな』という感想が胸のうちに湧いてきた。彼はスフィンクスに対し、努めてにこやかな表情をつくろいながら話しかけた。

「非道い事をするために、片方の心臓を眠らせるっていう、工夫をあなたはしてるんだね。にんげんという生き物はフツウ、なるべく非道い事をしないように生きてるもので、中には良い事をするのが生きる目的って人たちもいるんだ」

ここで彼は言葉を切った。スフィンクスは、さして興味もなさそうに、でも一応は、聞いている。彼は続けた。

「ボクはまだ駆け出しの冒険者だから、モンスターの事もあまり良く知らない。だから教えて欲しいんだ。モンスターの存在意義の中に、にんげんに対して非道い事をするってのが、あるのか無いのか」

するとスフィンクスは、しばらくの間、考える風だったが、それはある、と呟いた。

「最初に言っておくがね、にんげんに対して良い事をするモンスターも、中には存在する。でも基本、モンスターとは、人類に対する神々の罰だと思っておいた方が良いだろうね。にわかマッチョのひ弱な戦士さん、あんた、モンスターと戦うつもりかい?」

重々しく、カスウィザードは頷いた。スフィンクスが言う。

「だったら覚悟しておきなよ、いつかは神の怒りにも触れるってね」

ふふっ、と彼は笑った。そして言い放った。

「では唐突だが、第一の謎掛けに入ろう。神とはなんだ?」

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登場人物紹介

剣士カスウィザード  元魔法使い志望、元おぼっちゃま。現在は貧乏剣士(駆け出し)。駆け出しの分際で、ドワーフの名工キリクの手になる名剣『雷神の剣』を、喉から手が出るほど欲している。


美女タニア ?


魔導士ポナン 悪道に落ちた、元大魔法士

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