第29話

文字数 665文字

徒歩で片道五日の行程、帰りも五日かけて彼らは帰った。アレクサンドリアの城壁が地平線に見えてくると、彼らは駆け出したいような衝動を抑えねばならなかった。

「ついに、ついに」とカスウィザード。「帰ってきた。俺たちのはじめての冒険は・・・成功と言えたのかどうか、分からないけれど」

「雷神の剣は諦めるんだね?」とパックが彼を見上げて言う。

「クラーケンだって今は諦めるさ。実力に見合ったところを狙う」

次の冒険の当てがあるわけではなかった。だが、流れに身を任せよう、と彼は考えていた。彼には憧れの人物がいた。剣王ゴムリスである。ゴムリスは、最初から強かったのだろうか?それとも、様々な試練の果てに強さの極みともいうべきものを体得したのであろうか?

「ともかく」と彼は言った。目の前に、アレキサンドリアの城壁の門がそびえたっていた。
「無事、帰った」

彼らはいったん家に向かい、ロバの荷を下ろすと、ロバを返しに商業区に向かった。ロバを愛する老人は、涙目でロバを迎えた。「モンスタアどものいけにえになると、みんな言うとったんじゃ。あんたらと共にな。あんたらは、とんでもない詐欺師じゃって」

「無事、帰ってきたよ。スフィンクスの心臓は手に入らなかったけれど」カスウィザードがにっこり笑って言うと、「あんたらの心臓が無事で、わしのロバの心臓も今も元気に動いちょる!それが何よりの奇跡なんじゃ!」と老人が感極まったかのように言う。(このおっさん、そこまで俺らの実力を疑っていたのか)と心中複雑なカスウィザードであった。

その足で、彼らは邪道士ポナンの館に向かった。
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登場人物紹介

剣士カスウィザード  元魔法使い志望、元おぼっちゃま。現在は貧乏剣士(駆け出し)。駆け出しの分際で、ドワーフの名工キリクの手になる名剣『雷神の剣』を、喉から手が出るほど欲している。


美女タニア ?


魔導士ポナン 悪道に落ちた、元大魔法士

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