第20話

文字数 670文字

「十個か。でも、なんでそんなに心臓が要るんだ?」

素朴な疑問を口にするカスウィザード、それは呟きみたいなものだったけれど、スフィンクスはそれに答えた。

「この巨体を動かすのに八つ、そして、考えるのに二つ要るの。このアタクシの二つの脳は、それぞれ別の心臓で動いているの。性格もそれぞれで違うわ」

「困らないか?」

「なんで?」

「考えが同時に二つあったら、物事を決められない」

「いいの、あたしは滅多に動かないから。動くことは、あたしのたった一人の部下、このモームがやってくれる。」

スフィンクスがそういうと、傍らの大烏が、面倒くさそうにちょっと頭を下げて見せた。

『全然うごかないんなら、8個も心臓要らないよね、きっと』こそっとパックがカスウィザートに囁く。『だな』と返すカスウィザード。『それに、頭脳を動かす心臓だって、本来なら一つでいいはずなんだ。頭が2つで性格も2つ、これは厄介だよ、本人にとっても。心臓が一個になれば、性格も一つに統合されるかもしれない。その時、むしろスフィンクスに感謝されるべきはこのおれだ』とカスウィザードは内心ですばやく考えた。彼はスフィンクスに尋ねた。

「知恵比べを楽しむのは、2つの心臓のうち、かたっぽだけなのかな?それとも、2つとも頭脳派の心臓なのかな?」

スフィンクスはニヤリと笑って答えた。

「頭脳派の心臓は、一つだけよ。もう一つの心臓は、感じるためにあるの。そしてその心臓は、眠らせてあるのよ。なんでって、それは・・・非道い事するためよぉぉお!!!」

最後の方は、絶叫になっていた。カスウィザードたちはその場に凍りついた。
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登場人物紹介

剣士カスウィザード  元魔法使い志望、元おぼっちゃま。現在は貧乏剣士(駆け出し)。駆け出しの分際で、ドワーフの名工キリクの手になる名剣『雷神の剣』を、喉から手が出るほど欲している。


美女タニア ?


魔導士ポナン 悪道に落ちた、元大魔法士

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