第11話
文字数 843文字
夜の気配をかすかに残した空気が、昨日の不眠による眠気に包まれた、剣士カスウィザードの頬を気持ちよくなでていく。といって空気それ自体に、あるいは空気を司る風の神エアその『人』の心の中にすら、カスウィザードを助けてやろうとか、気持ち良くしてやろうといったココロがあったわけではない。そのことは他ならぬカスウィザード自身が重々承知していた。欲にまみれた出世主義者に過ぎないこの俺を、神々が嘉するわけもないと、どこかで達観していたのである。
だからこそ彼は、父が死んだ日から、筋肉トレーニングを一日たりとも欠かさなかったのである。出世のとば口として、知識も重要であるが、最後にものを言うのは体力だろうと彼は考えていたからだ。彼は、神祐を当てにして日々を無為に過ごすといったタイプの人間ではなかった。人としていかに欠陥があろうとも、幸運をつかみ取るための努力は自分自身で行う、その清潔さは少なくとも人として備えているつもりの、人間だった。
孤独な影が砂漠を歩いていく。カスウィザードには、人外の友達が出来た。人間の友達は少ないか、いないと言っても良い彼だが、この人外の友達パックとは確かに妙にウマが合った。大言壮語する、おぼっちゃま育ちの努力家の剣士を、謎めいた経歴の『小人の王パック』は、面白がり、皮肉たっぷりに、でも穏やかに受け容れた。なりは小さかったが、確かにこのパックは、『大物』だったのかもしれない。
街から山岳地帯まで、砂漠が続く。砂漠と言っても生物の影も見られぬような無毛地帯ではなくて、オアシスが点在する、目にも楽しい穏やかな砂漠である。今も、小さな狐のような生き物が、岩の影から彼らの歩みをじっと観察していた。
やがて砂漠が途切れて、目前に巨大な岩山が姿を現した。
『もう日も暮れる。ここらで野宿するか』カスウィザードが肩の上辺りを浮遊するパックに言うと、『さ、賛成。さすがに疲れたぜ』とパック。彼らは一日で砂漠を歩き切ったロバをねぎらい、ずた袋から取り出した干し草と、皮袋の水を与えた。
だからこそ彼は、父が死んだ日から、筋肉トレーニングを一日たりとも欠かさなかったのである。出世のとば口として、知識も重要であるが、最後にものを言うのは体力だろうと彼は考えていたからだ。彼は、神祐を当てにして日々を無為に過ごすといったタイプの人間ではなかった。人としていかに欠陥があろうとも、幸運をつかみ取るための努力は自分自身で行う、その清潔さは少なくとも人として備えているつもりの、人間だった。
孤独な影が砂漠を歩いていく。カスウィザードには、人外の友達が出来た。人間の友達は少ないか、いないと言っても良い彼だが、この人外の友達パックとは確かに妙にウマが合った。大言壮語する、おぼっちゃま育ちの努力家の剣士を、謎めいた経歴の『小人の王パック』は、面白がり、皮肉たっぷりに、でも穏やかに受け容れた。なりは小さかったが、確かにこのパックは、『大物』だったのかもしれない。
街から山岳地帯まで、砂漠が続く。砂漠と言っても生物の影も見られぬような無毛地帯ではなくて、オアシスが点在する、目にも楽しい穏やかな砂漠である。今も、小さな狐のような生き物が、岩の影から彼らの歩みをじっと観察していた。
やがて砂漠が途切れて、目前に巨大な岩山が姿を現した。
『もう日も暮れる。ここらで野宿するか』カスウィザードが肩の上辺りを浮遊するパックに言うと、『さ、賛成。さすがに疲れたぜ』とパック。彼らは一日で砂漠を歩き切ったロバをねぎらい、ずた袋から取り出した干し草と、皮袋の水を与えた。