第22話

文字数 633文字

ドクン、とスフィンクスの心臓が大きく脈打つ音がした。勿論それは、スフィンクスの頭脳に血を送る、頭脳派の心臓である。

鼻息も荒く、そしてスフィンクスは目をかっと見開いて、荒々しくカスウィザードの事をにらみつけた。

「神の姿を、アタシは見たことがない。勿論その声すら、聴いたこともない。ただすべてのモンスターが生まれながらにして知っている事実、それは神がモンスターに使命を与えたって事。その使命とはすなわち、人類を出来るだけ多く苦しめるって事。それが神の愛であり、憎しみでもある。神とは、人類に対する愛と憎しみの事よ。」

なるほどなぁ、とカスウィザードは思った。思わず惚れ惚れとしてしまうような、明確なスフィンクスの回答ではあった。

「スフィンクスよ、あなたはぼくの謎かけに見事に答えた。あなたもぼくに謎をかけるがいい。そしてそれにぼくが失敗したならば、あなたが逆にぼくの心臓を取れ!」

そう吠えて、ちらりと見ると、となりでパックが心配そうに明滅していた。「大丈夫」と、自分にも言い聞かせるように彼は言った。

スフィンクスは目を瞑り、歌うように謎掛けを始めた。

「生きるために食べる。食べるために殺す。楽しみのために殺す。モンスターは人をなぶり殺す。そしてにんげんは家畜の命をもてあそび、殺して食べる。にんげんは楽しみのために家畜の皮をはぎ、きらびやかに着飾り、そして恋をする。にんげんは生き、食べ、楽しみ、そしてモンスターは殺し、楽しみ、食べる。それはなぜ?そしてこれを何と言う?」

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登場人物紹介

剣士カスウィザード  元魔法使い志望、元おぼっちゃま。現在は貧乏剣士(駆け出し)。駆け出しの分際で、ドワーフの名工キリクの手になる名剣『雷神の剣』を、喉から手が出るほど欲している。


美女タニア ?


魔導士ポナン 悪道に落ちた、元大魔法士

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