第28話

文字数 481文字

踵を返して帰りかけて、カスウィザードが言った。

「あの・・・」

「なに?」少し遠くから、スフィンクスが聞いてくる。

「うんこなんだけど、床に落ちてる」

スフィンクスの顔が曇る。

「少し掃除していってもいいかな?」

スフィンクスは顔を真っ赤にして言った。

「あ・・・ありがとう。恩に着るわ」

スフィンクスの横でモームが、バツが悪そうにもじもじとし、すまん、とでも言うかのように頭を下げた。

カスウィザードは館の入り口に向かって歩きながら、背中のリュックサックから小さな布の袋を取り出し、目についた糞をそこに入れていった。大概の糞は乾燥していて、臭いはほとんどなく、こぶし大の大きさだった。

館の入り口で、重い石の横開きのドアを開けると、西陽が眼に飛び込んできた。

この世界の太陽は、緑がかった黄色で、この日カスウィザードが視た西陽は、空気の加減で縁が赤紫色に見えた。

「きれいだな・・・」呟くと、パックがうんと言った。

「ぼくたち、生きて戻れたね、スフィンクスの館から」パックが言う。

「だな。けどまだ帰りの行程がある。気を抜くなよ」

彼らは杭につないでいたロバを放し、南に向かって歩き始めた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

剣士カスウィザード  元魔法使い志望、元おぼっちゃま。現在は貧乏剣士(駆け出し)。駆け出しの分際で、ドワーフの名工キリクの手になる名剣『雷神の剣』を、喉から手が出るほど欲している。


美女タニア ?


魔導士ポナン 悪道に落ちた、元大魔法士

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み