第15話
文字数 772文字
この世界の太陽は、赤紫色である。朝でも昼でも夜でも、一定の温度で照りつけてくる。
太陽が魔力の源、という説を唱える学僧もいた。僧侶たちは何を崇めていたか?目に見えぬ神々を。目には見えぬが、にんげんたちは様々な折に、その存在を感じることがあった。だから、このファンタジーの世界でも、目に見えぬものを大切に敬う宗教というものが、一定の地位を得ていた。
カスウィザードも、父親を失くしてから、考えるようになった。子供のころは魔力という華々しいものにむやみと憧れたが、大人になった今は、体力こそが出世の要だと、努力を欠かさぬようになり、同時に、『神が』いつか彼と彼の母親を幸せにしてくれるはずだと、心のどこかで信じてもいた。
同時にそれは、努力の一つも行わない『単なる神頼み』であってはならなかった。
そのようなことは、彼自身の合理主義が許さなかっただろう。
出世などという俗っぽいことを、神がいちいち面倒見てくれるわけもなく。だから彼は出世のとば口は自分でつかまねばならないと感じていたのだ。そこで天から降ってきた仕事が、スフィンクス退治だったのである。
スフィンクスの心臓を見事持って帰れば、邪道士ポナンが彼に必要な金を渡すはずであった。
赤紫色の太陽が、中天を横切った。彼らは岩山を下りきった。そして彼らの目の前には、広大な川が広がっていた。カスウィザードは、思わず舌打ちした。
「この川がこれほど広大だとは、思いもよらなかった。地図ではただの線だったんだ」
するとパックが言った。
「おいらのトモダチの力を使えば、ここを渡れるよ」
「友達?」
「うん」
パックはその場で歌い始めた。なだめるような、祈るような、説き伏せるような、静かな優しい声で。すると風の中から一頭の大きなイルカが現れて、ぽちゃんと川に飛び込んだ。
イルカは、パックに微笑み、声をかけた。「よう、大将!」
太陽が魔力の源、という説を唱える学僧もいた。僧侶たちは何を崇めていたか?目に見えぬ神々を。目には見えぬが、にんげんたちは様々な折に、その存在を感じることがあった。だから、このファンタジーの世界でも、目に見えぬものを大切に敬う宗教というものが、一定の地位を得ていた。
カスウィザードも、父親を失くしてから、考えるようになった。子供のころは魔力という華々しいものにむやみと憧れたが、大人になった今は、体力こそが出世の要だと、努力を欠かさぬようになり、同時に、『神が』いつか彼と彼の母親を幸せにしてくれるはずだと、心のどこかで信じてもいた。
同時にそれは、努力の一つも行わない『単なる神頼み』であってはならなかった。
そのようなことは、彼自身の合理主義が許さなかっただろう。
出世などという俗っぽいことを、神がいちいち面倒見てくれるわけもなく。だから彼は出世のとば口は自分でつかまねばならないと感じていたのだ。そこで天から降ってきた仕事が、スフィンクス退治だったのである。
スフィンクスの心臓を見事持って帰れば、邪道士ポナンが彼に必要な金を渡すはずであった。
赤紫色の太陽が、中天を横切った。彼らは岩山を下りきった。そして彼らの目の前には、広大な川が広がっていた。カスウィザードは、思わず舌打ちした。
「この川がこれほど広大だとは、思いもよらなかった。地図ではただの線だったんだ」
するとパックが言った。
「おいらのトモダチの力を使えば、ここを渡れるよ」
「友達?」
「うん」
パックはその場で歌い始めた。なだめるような、祈るような、説き伏せるような、静かな優しい声で。すると風の中から一頭の大きなイルカが現れて、ぽちゃんと川に飛び込んだ。
イルカは、パックに微笑み、声をかけた。「よう、大将!」