第12話
文字数 1,502文字
翌日の朝。カスウィザード一行は、岩山を登り始めた。カスウィザードは岩山をよじ登りながら、片手に握りしめたロープでロバを引く。忠実なロバは、もし、もし、と岩山の土を踏みしめて彼について行く。
ふよふよと飛びながら彼らと共に行くパックは、自分だけ楽に進める事に、いささかバツの悪そうな表情である。とはいえここでパックに歩かれては、進軍にますます支障をきたすので、唯一の飛行ユニットとしての面目を、パックにはここで大いに躍如してもらわねばなるまい。
父が死んだ日から心を入れ替えて毎日筋肉トレーニングに励んできた青年のがんばりはここで報いを受けることとなる。岩山を登り始めて半刻もすると、ふいに体が楽になり、あと何時間でも登れそうな気がしてきたのである。
「パック、山登りって楽しいな」
「へえ、そうかね」
「ああ。景色がだんだん変わっていくのが、おれには面白いみたいだ」
「そいつぁよござんした」
なんて会話を交わしながら、異類のともがらと二人、それからロバ一頭、もしもしと岩山をよじ登っていると。
突如、けえええええっという叫びのような声が聞こえてきて、ばさばさいうやかましい羽音と共に、全長4メートルはあろうかという巨鳥が、行く手を遮るようにして、彼らの前に立ちはだかった。
「でかい鳥だな!」とパック。
「うむ。ナダンの入試問題にも出てきた。岩山で怪鳥とくれば、あれは間違いなくロック鳥だ」
と、ややおちついてカスウィザード。
「で、どうする?」
「ひとまずは立ち向かおう」と言って、カスウィザードは腰のものを抜いた。それをみておったまげるパックである。
「っておまえ、それ、木刀じゃねえか!」
「いかにも。毎日これで素振りを欠かさなかったから、振り味は抜群だ」
「そういう問題じゃねえ!木刀でこの鳥やスフィンクスに立ち向かうっていうのかよ!あまりにもそれは無謀だろうがよ!」
「良いのだ。スフィンクス如き中級の一つや二つ、木刀でねじ伏せられんでは、雷神の剣の所有者たる資格もないような気がしてな。錆びた鉄の、中古のやっすい剣の一本ぐらい、買えんでもなかったが、金ももったいないし、あえて買わんかった」
「なんちゅう・・・」
『けええええええっ!』
彼らの会話を聞いていたのかいなかったのか、そもそも理解できたのか、分からぬが、ロック鳥は激して彼らに襲い掛かってきた。
「うわッ、来た!」言いつつ、構えた木刀で爪の一撃を防ぐカスウィザード。パックはすごいスピードでその場を離脱した。
もう一撃、爪が来る。それを体をひねってかわすと、今度は嘴だ。危うく頭を噛み潰されそうになり、カスウィザードはごろごろ転げまわる。そこを何度も嘴で攻撃され、服が破け腕には血がにじんだ。
「おい、おい、剣士、大丈夫か?」
「・・・・・・」
「おい!」
ロック鳥が大きく嘴を開けてとどめの一撃を決めに来たその時。カスウィザードは木刀を両手に持ち替え、大きく開いた嘴の中にそれを押し込んだ。
「!!!、!!!」
鳥は突然のことに驚いて、むやみと羽ばたいた。もうもうとたちこめる砂埃。勝ち誇って立ち尽くす、剣士カスウィザード。両手を組んで、嘴の上からたたき下ろす。バキッという音がして、嘴の中の木刀は、なかば折れた。その衝撃に涙ぐみながら、怪鳥はバサバサと羽ばたいて撤退していった。
カスウィザードは振り返って空の上の友を見た。
「すごいな・・・お前!」
「まあな。色んなモンスターとの戦い方を、来る日も来る日もシュミレートしていた。初戦にしては良くやれたと思うよ」と、思わず自分で自分をほめてしまう。
「でも、刀は?」
「あと三本ある」そう言ってリュックから一本木刀を取り出して、腰に差した。
ふよふよと飛びながら彼らと共に行くパックは、自分だけ楽に進める事に、いささかバツの悪そうな表情である。とはいえここでパックに歩かれては、進軍にますます支障をきたすので、唯一の飛行ユニットとしての面目を、パックにはここで大いに躍如してもらわねばなるまい。
父が死んだ日から心を入れ替えて毎日筋肉トレーニングに励んできた青年のがんばりはここで報いを受けることとなる。岩山を登り始めて半刻もすると、ふいに体が楽になり、あと何時間でも登れそうな気がしてきたのである。
「パック、山登りって楽しいな」
「へえ、そうかね」
「ああ。景色がだんだん変わっていくのが、おれには面白いみたいだ」
「そいつぁよござんした」
なんて会話を交わしながら、異類のともがらと二人、それからロバ一頭、もしもしと岩山をよじ登っていると。
突如、けえええええっという叫びのような声が聞こえてきて、ばさばさいうやかましい羽音と共に、全長4メートルはあろうかという巨鳥が、行く手を遮るようにして、彼らの前に立ちはだかった。
「でかい鳥だな!」とパック。
「うむ。ナダンの入試問題にも出てきた。岩山で怪鳥とくれば、あれは間違いなくロック鳥だ」
と、ややおちついてカスウィザード。
「で、どうする?」
「ひとまずは立ち向かおう」と言って、カスウィザードは腰のものを抜いた。それをみておったまげるパックである。
「っておまえ、それ、木刀じゃねえか!」
「いかにも。毎日これで素振りを欠かさなかったから、振り味は抜群だ」
「そういう問題じゃねえ!木刀でこの鳥やスフィンクスに立ち向かうっていうのかよ!あまりにもそれは無謀だろうがよ!」
「良いのだ。スフィンクス如き中級の一つや二つ、木刀でねじ伏せられんでは、雷神の剣の所有者たる資格もないような気がしてな。錆びた鉄の、中古のやっすい剣の一本ぐらい、買えんでもなかったが、金ももったいないし、あえて買わんかった」
「なんちゅう・・・」
『けええええええっ!』
彼らの会話を聞いていたのかいなかったのか、そもそも理解できたのか、分からぬが、ロック鳥は激して彼らに襲い掛かってきた。
「うわッ、来た!」言いつつ、構えた木刀で爪の一撃を防ぐカスウィザード。パックはすごいスピードでその場を離脱した。
もう一撃、爪が来る。それを体をひねってかわすと、今度は嘴だ。危うく頭を噛み潰されそうになり、カスウィザードはごろごろ転げまわる。そこを何度も嘴で攻撃され、服が破け腕には血がにじんだ。
「おい、おい、剣士、大丈夫か?」
「・・・・・・」
「おい!」
ロック鳥が大きく嘴を開けてとどめの一撃を決めに来たその時。カスウィザードは木刀を両手に持ち替え、大きく開いた嘴の中にそれを押し込んだ。
「!!!、!!!」
鳥は突然のことに驚いて、むやみと羽ばたいた。もうもうとたちこめる砂埃。勝ち誇って立ち尽くす、剣士カスウィザード。両手を組んで、嘴の上からたたき下ろす。バキッという音がして、嘴の中の木刀は、なかば折れた。その衝撃に涙ぐみながら、怪鳥はバサバサと羽ばたいて撤退していった。
カスウィザードは振り返って空の上の友を見た。
「すごいな・・・お前!」
「まあな。色んなモンスターとの戦い方を、来る日も来る日もシュミレートしていた。初戦にしては良くやれたと思うよ」と、思わず自分で自分をほめてしまう。
「でも、刀は?」
「あと三本ある」そう言ってリュックから一本木刀を取り出して、腰に差した。