第5話
文字数 526文字
緞帳が上がった奥に座っていたのは、ウヴァロヴァイトだった。
薄い度の眼鏡に、ライオンの鬣じみたアッシュの髪。そして、金と銀で派手に彩られた椅子に身体を預け、チュロスを食べている。もぐもぐと口を動かして生徒たちを見下ろしているのだ。
「こ、校長」
周りを取り巻く教師たちが一生懸命にチュロスを離すよう、または起立をするよう、手と困惑極まる表情で促すが、ウヴァロヴァイトは全く動じず、じっと子供たちを睨んでいる。
ややあって、口の端についたチュロスの欠片を、真っ赤なベロを伸ばしてべろりと舐め取ると、やっとマイクを部下の若手の女性に持って来させ、持たせたまま口を開いた。
「今日からこの学園の教師たち、つまりこの学園のプライドの頂点に立った、ウヴァロヴァイトだ。お前たちの命は私のものになった」
子供たちのざわめきが大きくなる。
各々、恐がっているというよりは、このおかしなお兄さん誰だろう、という不審者を見る目だった。
「私はこうして、立ち上がることもできないが、お前たちの命を紙よりも軽く扱うことが出来る。なぜなら、私たち教師がライオンならば、お前たち生徒はシマウマだからだ――ライオンは、シマウマの群れを前に、先ず子供を狙う」