第2話
文字数 340文字
「ジェード先生、そろそろ体育館へ来てください」
声を掛けられて顔を上げる。何処かクラスの担任教師だろう。全く知らない顔だが、相手はもう、此方の名前を憶えているらしい。凄いなぁ、教師と言うのは頭が良いのだ。
体育館に案内され、扉を開くと、むわっと子供の汗っぽい香りと、ひそひそ声が溢れかえって来た。どうやら、会が始まるまで、束の間のお喋りということのようだ。
この後、ウヴァロヴァイトの商品にされるなんて、露ほども思っていないのだろう。
そう言えば、自分がこの年頃の時代、何をしていたか、ジェードは壇に近づくように歩きながら、思い返していた。笑った覚えなんてない。ただ、いつも腹を空かせて、あとは夜を恐れていた。夜になって眠っているとこの世で一番怖い物がやって来るから。