第3話
文字数 415文字
それはただの酔った父であったが、当時の幼い自分にとっては充分に力の強い相手だった。繋がれた小象が逃亡を諦めるように、ジェードも諦めの境地に達した。
ジェードを奮い立たせたのは兄弟の存在だった。
ジェードは、自分に助けを求めてきた幼い弟や妹の手を思い出す。あの小さな紅葉のような手。それから、自分の手を見た。
自分は彼らの為にこの手を汚した。
そして、その感情はやがて、救いようのない嫉妬となって――つまりは、兄弟ばかりが美しい手を保ちながら生きていることを疎ましく思うようになり、ジェードは、やっと手に入れかけた大切なものを全て自分で壊してしまったのだ。
幸せになれる筈だったのに――
今、ジェードは一人である。
毎日とても身軽で生きやすい。
孤独で狂ってしまうかと思ったら、全然そんな気配も無く、のうのうと元気に生きているのだ。
ただ、誰かのために生きるなんて、本当にクソ食らえだな、と強く思うようになった。
ジェードを奮い立たせたのは兄弟の存在だった。
ジェードは、自分に助けを求めてきた幼い弟や妹の手を思い出す。あの小さな紅葉のような手。それから、自分の手を見た。
自分は彼らの為にこの手を汚した。
そして、その感情はやがて、救いようのない嫉妬となって――つまりは、兄弟ばかりが美しい手を保ちながら生きていることを疎ましく思うようになり、ジェードは、やっと手に入れかけた大切なものを全て自分で壊してしまったのだ。
幸せになれる筈だったのに――
今、ジェードは一人である。
毎日とても身軽で生きやすい。
孤独で狂ってしまうかと思ったら、全然そんな気配も無く、のうのうと元気に生きているのだ。
ただ、誰かのために生きるなんて、本当にクソ食らえだな、と強く思うようになった。