第1話

文字数 564文字

 翌日、朝、ジェードが出勤すると、職員室に教師はおらず、たった一人いるクンツァイトが机の上に座って、にこにこと手を振って来るばかりだった。
 教師たちは、もうウヴァロヴァイトの部下たちに始末されたか、

「上の者のルールに逆らうからだ」

 上の者の言ったことを素直に聞いていれば生きながらえる。この学園内ではウヴァロヴァイトのルールに従っておくことが重要だ。何故、一般人はそれが分からないのだろうか。昨日なんか体育館でナイフまで抜いて示唆してやったのに。一般人への躾は徒労感が残る。
 ジェードは、それを幼い頃からの経験則として覚えていた。生きたければ反発心は無用。
 あの時のように。
 扇風機すらない、ぼろぼろの畳の上で寝転がって、煙草の匂いを煙たく思っていた、あの頃のように。
 それに反発しなければ、今日も弟や妹たちは生きていたのだ。
 職員室にルチルが来たのは随分後だった。
 ルチルは、朝からウヴァロヴァイトの身の回りのことをやり、それから来るので、遅くなるようだった。彼女は決して唇を動かさない、何の言い訳もしないが説明もしないので、あくまで想像だが。
 まぁ、今日からの授業の時間割は全て、ウヴァロヴァイトが決める。要は、授業の始まりは、ウヴァロヴァイトの部下であるルチルが来たら、ということで構わないだろう。
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登場人物紹介

ウヴァロヴァイト。

ジェードの上司。

金を貸した相手にどんどん子供を作らせ、

その臓器を売って金を稼いでいるとのうわさ。

ルチル。

ウヴァロヴァイトの一番の部下。

クンツァイト。

界隈で有名な悪党組織のボス。

ウヴァロヴァイトより組織の人数は多い。

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