第6話

文字数 424文字

 異様な校長の雰囲気を感じ取って、僅かにざわつき始める体育館内の教師の声に混ざって、いや、その少し離れたところから、金属音がしているのをジェードは聞き取っていた。
 かちゃん。
 かちゃん。
 恐らく、ジェードだけではなく、反対側の壁に寄りかかっているルチルも、この音を確実に聞き取っているだろう。こうやって、後ろ暗い仕事をしているものは感性が異なる。
 此処にいる教師や子供たちのように、のほほんと生きていない。
 俺の兄弟のように、手を汚した俺の恩恵で飯を食っていない。
 イライラする。
 そんな風に生きられたら良かったのに。何度も思う。
 だから、分かる。
 この小さな金属音は、クンツァイトが鍵を閉めて回る音だ。
 ウヴァロヴァイトが演説を打っているうちに、全てを閉じ込める音だ。
 此処にいる大多数にとって絶望の音だ。
 それなのに、みんな周りの様子を窺うように見る無意味な行動に必死で、逃げようとすらしない。
 一般人って馬鹿だなぁ。
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登場人物紹介

ウヴァロヴァイト。

ジェードの上司。

金を貸した相手にどんどん子供を作らせ、

その臓器を売って金を稼いでいるとのうわさ。

ルチル。

ウヴァロヴァイトの一番の部下。

クンツァイト。

界隈で有名な悪党組織のボス。

ウヴァロヴァイトより組織の人数は多い。

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