第8話
文字数 627文字
捕まった男児は、両足が地面から浮いてなお、未だ意味が分からないというぽかんとした顔でいた。その顔のまま、皮の袋に放り込まれ、口を縛られた。
そうなってやっと、袋がぼこぼこと波打ち、中の男児が暴れているのが分かる。が、とっくに手遅れだ。
今更、どこからか割れんばかりの悲鳴が上がった。
パニックになって、散り散りに逃げる生徒を次々に、ルチルは手当たり次第に追い掛けて、ぱっぱと袋に詰め込んだ。
「流石ルチルは仕事が早いな」
ウヴァロヴァイトは手を組んでその様を眺めている。
通報しようとしている教師が、ジェードの目の端に映った。こうなれば、ジェードがする仕事は一つだ。
心拍数を上げる。アドレナリンが必要だ。アドレナリンを出すための蛇口をひねる光景を、ジェードは想像する。ジェードの同業者なら、いつでもできるように、そういうスイッチを必ず持っている。
ジェードは通報しようとする教師の黒髪を掴んで引き摺り倒した。
彼の顔は見ていない。見ているけれど、ジェードの目には、彼の顔はあの日の、父親の顔に見えているのだ。
あの、ジェードにこうやってやられた時の、化け物を見るような、見開かれた目を重ねて見る。どんな標的を倒す時も、ジェードはこうやってやって来た。
何の惜しげもなく、スーツのポケットからナイフを取り出し――顔の横に突き立てる。
「動くな。通報は俺のルールに反する。ルールに反すれば、次はこの刃先がお前の顔を八つ裂きにする。死ねるのはその後さ」
そうなってやっと、袋がぼこぼこと波打ち、中の男児が暴れているのが分かる。が、とっくに手遅れだ。
今更、どこからか割れんばかりの悲鳴が上がった。
パニックになって、散り散りに逃げる生徒を次々に、ルチルは手当たり次第に追い掛けて、ぱっぱと袋に詰め込んだ。
「流石ルチルは仕事が早いな」
ウヴァロヴァイトは手を組んでその様を眺めている。
通報しようとしている教師が、ジェードの目の端に映った。こうなれば、ジェードがする仕事は一つだ。
心拍数を上げる。アドレナリンが必要だ。アドレナリンを出すための蛇口をひねる光景を、ジェードは想像する。ジェードの同業者なら、いつでもできるように、そういうスイッチを必ず持っている。
ジェードは通報しようとする教師の黒髪を掴んで引き摺り倒した。
彼の顔は見ていない。見ているけれど、ジェードの目には、彼の顔はあの日の、父親の顔に見えているのだ。
あの、ジェードにこうやってやられた時の、化け物を見るような、見開かれた目を重ねて見る。どんな標的を倒す時も、ジェードはこうやってやって来た。
何の惜しげもなく、スーツのポケットからナイフを取り出し――顔の横に突き立てる。
「動くな。通報は俺のルールに反する。ルールに反すれば、次はこの刃先がお前の顔を八つ裂きにする。死ねるのはその後さ」