第30話 メリア神話

文字数 8,357文字

 世界が暗く染まる。
 巨大なラベンダーの実の前に立つシルビアは優しく右手を添え、そっと語り掛ける。それはまるで赤子に語り掛けるよう。
「待っていて、皆。今私が全てを終わらせる。この輪廻を断ち切るから」
 その時。
 ラベンダーを囲うように立っていた巨大な大蛇の体が次々に黄色い輝きを放ち始めた。その光は次々に増えていき、102個の輝きを見せる。
「どういうこと!?なんで体が消えていくの、死なせないようにしたはずなのに!」
 大蛇の中に捕らえたはずの102人の炎の魔女の体が次々に黄色く輝き始める。それは魔女の死を意味していた。
「そんな!死んではダメ!なんのために私は!」
 意味もなく、輝く大蛇のおなかに手を伸ばす。しかし、その手は何もない空を切るだけだった。
 そして次の瞬間。
 氷の蕾がはじけ飛び中から膨大な炎の光が空高く打ちあがる。
 その炎の中から姿を現したの真っ赤な炎のドレスを身に着けるアデリーナだった。
「いい加減にして!」
 シルビアの掛け声と同時にアデリーナの頭に頭痛が走る。
 空間を際いて直接頭の中に魔法が流れてくるのを感じた。
「体のコントロールが」
 必死に片目を上げ落ちそうになる意識を必死に耐える。体をコントロールすることが目的なのだとすぐにわかるが、精神をコントロールする魔法を使ったことのないアデリーナには魔力の使い方の要領がわからない。
 無限の魔力をいいことに止むこともなく膨大な魔力で精神を乗っ取ろうとしてきている。
 そして、あっけなくアデリーナの意識が飛んだ。
 すると突然、脳内に緊張感のない声が響く。その声はアリーチェ様だった。
『攻撃が最大の防御ってね!これがあなたの親として教えられる最後の力。ちゃんと受け取ってね~』
 緊張感のない言葉とその託された思いに心の余裕が生まれる。
 同時に展開された魔法障壁は赤く輝き、さっきまで襲ってきていた精神支配から一気に解放されて。続いて、魔法障壁が頭上に三枚重ねで短く展開されると、周りの魔法障壁が姿を消した。
 次の瞬間、全てを貫く落雷がその魔法障壁に勢いよく落ちた。その魔法障壁越しから伝わる衝撃波に体全身がしびれた。しかし、今頃氷の魔女の攻撃に一々驚いてはいられない。
 アリーチェ様が最後にくれた魔法障壁の自動的に体を守ってくれた。さらに、あの雷を受けても一枚も壊れていない。魔法障壁の反転がすぐに行われ、攻撃で攻撃を打ち返している。
「なぜ、なぜだ!」
 シルビアが左腕を突き出すと、とめどなくあふれ出す氷の塊がアデリーナを襲う。同時にまたあの落雷が頭上から襲ってきた。
 アリーのくれた技が雷を相殺してくれているが、アデリーナの右手からあふれ出る炎ではまったく押し返せない。膨大な魔力がまだ不器用なアデリーナの魔法を簡単に押し返す。氷の勢いはさらに増し、横幅もさらに大きくなっていく。アデリーナをすりつぶせるほどの大きさに、打ち付けられている落雷をはじくのに手いっぱいで逃げることができない。
 ついに氷の塊がアデリーナを襲うときまた、頭の中で声が響く。
『思い出して。私が最後に見せたその姿を、その愛剣を。どんな時だって、顔を上げればそこには無限の可能性が広がっているの。あんたには世界を変える力がある。世界を救う力があるの。なんたって、アデリーナ。あなたは私の生徒だもの。これが私の最後の授業よ。忘れないでね、さあ、一緒に』
 アデリーナの赤いドレスの上に浮かび上がる銀色の鎧。その鎧の一部がヴィットリアの鎧のように赤く染まっていく。
 そして右手に現れた剣を構え、アデリーナは叫んだ。それにヴィットリアの声も重なる。
「『火炎龍破‼』」
 振り出されが豪炎と氷が鍔ぜりあう。雷と魔法障壁、氷と炎、どちらの鍔迫り合いも拮抗していて決着はつかない。
 そんなアデリーナの抗いにシルビアが感情のまま絶叫する。
「私は負けない!!負けるわけにはいかないんだ!」
 シルビアの誓約に対する憎悪が右手を動かした。巨大な大蛇が牙をむきアデリーナに迫りくる。アデリーナに左腕はない。完全に失った左腕を、まだ修復できてはいなかった。こんな膨大な魔力を相手に受け止める手段など何もない。
 そんな中、さらに頭痛がアデリーナを襲う。それは魔法による拒絶反応だと分かった。しかし、次に聞こえる声がアデリーナの痛みを忘れさせた。
 その中世的な声を聴き間違えるはずがなかった。
『アデリーナ。今のあなたなら大丈夫です。ずっとその体の内で感じていた氷の魔力を思い出して、私も力を貸します。渡した剣を使ってください。全てを知っています。だから、その上でシルビア様を助けてください。貴女ならできます……いいえ、貴女にしかできません』
 ブルーの言葉にうなずき、アデリーナは目をつむり体に伝わる冷たさを意識する。激痛が次第に和らぎ感覚が、氷の魔力がより鮮明になっていく。そして、損失していた左腕から氷が伸び、それが溶けると新しい左腕が生まれた。その左腕の先に掴んでいる剣は確かにブルーの愛剣——零剣バーブル。
 二人の声が重なった。
「『烈氷』!」
 打ち出された斬撃が冷気をまとい、一瞬にして大蛇を凍らせる。
 同時にアデリーナを襲っていたすべての攻撃を打ち破った。
 シルビアに向き直るアデリーナ、その鎧に新しく青いラインが入る。銀と赤と青で彩られた鎧を身に着けるアデリーナは兜をつけてはいない。
 その両手に構えられる炎と氷の剣がアデリーナの新たな領域へと昇華させる。
「どうやって……その力を……どうして」
 氷の魔法の力を使ったアデリーナに明らかに動揺しているシルビアはそんな問いかけをする。
 アデリーナの髪色が薄い赤色から、濃い赤紫色に代わり風にたなびく毛先は全体的に、鮮やかな赤毛と青毛が見える。
「私は始終の魔女。この輪廻を今断ち切る」
 鋭い目線で静かに言い切ったアデリーナの瞳は全てを受け入れた、覚悟を決めた瞳をしていた。全てを背負うものとして、私心を捨てた眼だった。
「なぜ!どうして!」
 声を荒げるシルビアは凍った大蛇の体から数万はくだらない氷の刃を次々にアデリーナに向かって伸ばしていく。それを高速で回避しながらシルビアに向かって飛び出した。行く場を防ぐ氷の刃を両手で次々に氷を切り落としながら氷の魔女に迫っていく。
 高速で飛んでくるアデリーナを雷が襲うが、アリーの魔法障壁が簡単に攻撃をはじく。しかし、ほぼ同時に放たれた巨大な水砲と中に宿る氷の槍を防ぐことができない。
 代わりにアデリーナの両手の剣がその強大な攻撃を向かい打った。
「氷火列缺」
 一瞬で氷の魔女の攻撃を打ち破り、2本の斬撃がシルビアを捕らえる。しかし、その斬撃はシルビアの魔法障壁に防がれた。
 だが、それでアデリーナは止まらない。その斬撃にさらに2つの魔力を一気に流し込んだ。
 一瞬青くらめいた障壁はすぐに反転し、アデリーナの持っていた2つの剣を弾き飛ばす。同時に魔法障壁が砕け散った。
 相打ちだった。
 しかし、その一瞬の隙をアデリーナは見逃さない。
 アデリーナが突き出した両手がシルビアのお腹に触れる。
「なっ……‼」
「エデンの開宴」
 巨大な大爆発が周りにいた大蛇もろとも全てを吹き飛ばした。白い祭壇の手前に大きなクレーターを作り、その中心にシルビアがボロボロになって倒れている。たったの一撃でシルビアは瀕死になっていた。
「黒い魔力……本当に始祖の力を……」
 アデリーナは容赦なく眼光から打ち出した黒いオーラでシルビアの体を打ち抜く。城は跡形もなく吹き飛び、ただの大きなクレーターとなった。しかし、それでもシルビアは立ち上がり、黒く染まった下半身を引きずりながらアデリーナをにらんだ。
 体のほとんどが毒に侵され、力尽きるのも時間の問題。遠い昔に持っていた力だからこそ、シルビア自身が一番よくわかっている。
 だからといって、シルビアは諦める訳にはいかなかった。ここまでやってきた執念がそうさせない。
「なぜ!なぜだ!なぜ邪魔をするの!その力を持ったなら、全てを知ったはず!それなのになぜ‼」
 勢いよく空に飛び出したシルビアはこの運命に抗うように叫んだ。
「なぜ止める!何故はばかる!人々は自由を扱いきれない!意味もなく争い、殺し合い、傷つけ合い、優しさ上に、誰かを想い自分自身を傷つける!自由の結果、何を見たか知っているはずよ!悩み苦しみ、胸が引き裂かれる。心の弱い人間は、簡単に他者を傷つける」
 その言葉がジュリオのこと、イヴァンのこと。それだけではないヴィットリア先生のこと、自分自身のことを思い起こす。
「それな人間が自由を扱い切れるわけが無い!沢山の不幸を呼び起こす!だから、私がこの世界を、人々を救おうとこの世界の誓約と戦って来たんだ!神域魔法での魔力の増大も、最下邸の犠牲者を無くすため!幻術魔法もより、信仰を強め!苦しみや憎しみから人々を救うため!人々から差別をなくし、生まれつきの優越をなくすため!」
 アデリーナが操る赤い障壁魔法が空に飛び出すシルビアを地面へとたたきつける。ボロボロな体をシルビアは無理矢理に立たせ、もう一度空へと飛び出した。そして、言葉を告げる。
「それだけじゃない!誓約に縛られず家族が自由に生きれるように!私のために、全てを捧げてくれたブルーの信念を守るために!……ぐはっ!」
 アデリーナの両手の矛先から打ち出されて、炎と氷が螺旋を描きながらシルビアを襲う。何もできず、また地面にたたきつけられた。
 もうボロボロで立つこともままならない。クレータの真ん中で地面を這うシルビアは崩れた祭壇の残骸に手を伸ばす。
 そこにあるのは氷の結晶の中に埋められていたのはラベンダーの花だった。
 その結晶を手に取ったシルビアは上半身を起こし、涙を流しながら大切に握りしめる。そして、その氷の決勝を胸にしまったシルビアは勢いよく空へ飛び出し叫んだ。
「アリーチェと約束した!永遠の楽園を作るために!何度繰り返しても、何度失敗しても諦めない。この束縛から抜け出す方法を探し出してみせるんだ‼そのために犠牲になるのは、私だけでいい‼」
 シルビアの両手が青い輝きを放つ。これが最後だとアデリーナもシルビアも互いにわかっている。
アデリーナも胸のうちを叫ぶ。それは贖罪なのかもしれない。言い訳なのかも知れない。たいした人生を生きてきた訳でもない。しかし、私が決めたことだ。例え、ひとりの世界を救う壮大な努力をたった1人が奪い去るものだったとしても。
「貴方も救うため。炎の魔女やヴィットリア、だけじゃない!ブルーも!私もそうだ!わかってほしいなんて言わない!それでも……ブルーがいっていた!あなたを救いたいと。貴方を救って欲しいと!彼女のたった1つの胸に残していた想い、口に出せず飲み込んでいた想いを、変わり私が叶えてるんだ!貴女と同じように私も最愛の人の願いを叶えるために!」
  シルビアが始めに打ち出した。アデリーナに向かっていく沢山の水砲。
 アデリーナが両手で切り落とそうと水泡に触れたとき、水泡が一瞬光輝き反転が起こる。それは水泡を模倣した魔法障壁だった。
 両手の剣がはじき飛ぶ。
 同時にシルビアは両手を強大な魔力で青く輝かせ、青い流星如く最後の命の輝きを煌めかせる。
 アデリーナの飛ばした赤い魔法障壁がシルビアを包む魔法障壁を吹きとばす。
「くっ……!」
 何も守る手段がなくなったシルビアは打ち破られた時のその衝撃に負けることなく、止まることなくアデリーナへ一直線に飛んでいく。
 シルビアがアデリーナの目の前まで迫ったその時。
 弾き飛ばされたアデリーナの愛剣アビゲイルが後ろからシルビアの左腕を切り落とした。続いて、飛来する零剣バーブルがシルビアの右腕を切り落とす。アデリーナが触らずとも操っていた剣に両手を切り落とされたシルビアの魔力は宙に落ちていき飛散する。
 さらに、アデリーナのそれぞれの手から溢れ出る氷と炎の砲弾がシルビアを襲う。歯を食いしばりながら、なんとかその攻撃をぎりぎりで回復した魔法障壁で防ぎきるシルビア。しかし、魔法障壁はその攻撃を防ぐのを最後に砕け散った。
 青い流星となり飛びかかるシルビアをアデリーナの眼光が襲う。
 眼光から放たれた巨大な白い光線がシルビアの下半身をいとも簡単に消し飛ばす。
 そして、シルビアの動きが止まった。力尽きたのだ。
 最後の戦いに決着がついた。
 アデリーナはシルビアに近付き、優しく声をかけようとした時、体の崩壊を始めたシルビアが最後の足掻きを見せる。
「やく……。約束、したんだからぁぁあああ!!
口を開け絶叫する、その喉の奥から青い輝きが漏れ出る。とっさに展開したアデリーナの魔法障壁をシルビアが頭突きをし、その皮膚で反転を行った。
 もしも失敗していれば頭が吹き飛ぶ、無理矢理な魔法でアデリーナの魔法障壁を打ち破る。
 そして、口から放たれた青い光線がアデリーナを襲った。ぎりぎりで体を横に移動させたアデリーナだったが、その光線は左耳を消し飛ばした。
 しかし、そこでシルビアは完全に力尽きた。
「シルビア様」
泣きたいはずなのに、涙がこぼれない。アデリーナは戸惑いながらも、これが始終の魔女になるということなのだと理解していた。
「いいのよ……。コレが私の結末なのね。……ああ、アリーチェ、それにブルー。待たせて……ごめんなさい。私も今そこに行くわ」
 アデリーナの手の中で、黄色い光となってシルビアは消滅した。
戦争が終わった大陸に光が指すと同時に、世界がまた黒く染まる。空を覆うほどの大きさの龍がアデリーナのものにやってくる。その龍は顔だけで数万メートルはくだらない。その龍の鼻息だけで、ラベンダーノヨテ聖域国のたつ大地が消し飛ぶほどの大きさ。
アデリーナにひれ伏すその龍は始祖の魔女の眷族。その世界の大陸を作った始祖のドラゴン。アデリーナはその龍の頭に乗り飛び去って行った。
 誰も住むことのない世界の果へ。
 ただ一つの神話を生み落とし。
 
 人々の間で語り継がれる。
 その物語の名は。



 メリア神話。

  これは気が遠くなるほどの、遠いはるか昔の話。
 そこには世界を統べるほどの力を持った強大な2つの種族がいました。
 片方は巨大な蛇の様な体は固いうろこに覆われ、背中にはとても大きな翼を持ったドラゴンでした。もう片方はドラゴンほどではありませんが、大きな体を持ち自由自在に魔力を扱う魔亜人でした。
 2つの種族はいつもいがみ合い争っていました。
 そんなある日、一匹のドラゴンと一人の魔亜人が恋に落ちました。誰にもばれないようにゆっくりと愛を育んでいる間に、2つの種族の仲はどんどん悪くなっていきました。
 そして、ついにドラゴンと魔亜人の総力をかけた決戦『終焉の審判』が訪れたのです。
 台地は砕け、木水は枯れ果てもなお、2つの種族は永遠の時を戦い続けました。
 そして、無の空間に生き残った一匹のドラゴンと一人の魔亜人は、恋に落ちた2人でした。
 ドラゴンは散らばった亡骸と岩をかき集め大きな大地を作り、それを支えました。魔亜人はその大地にもう一度木水を撒きました。
 それからドラゴンと魔亜人は一人の子どもをその大地に生み落としたのでした。
 その子どもの名前は『始終の魔女』
 始終の魔女はすくすくと育ちましたが、一人で寂しく孤独に生きていました。
 そんなある日、魔女の家に一人の女の子が訪れました。その女の子は何度も魔女の家を訪れ、魔女のはじめての友達になりました。魔女の力や知識は人を呼び寄せ、小さな村ができました。幸せは幸せを呼び、村は町となり大きな国となりました。
 しかし、人と魔女の時間には大きな差がありました。初めての友達がこの世をさると魔女は心を閉ざし、家に引きこもってしまいました。
 魔女を頼りにしていた人々は、次第に言い争いをはじめ喧嘩をし始めます。魔女はさもしい争いの仲介役に立ちましたが、収まることはありません。
 人々が増え続けると、それに比例して小さな争いが起き、大きな問題となっていきます。
 どちらの立場に付けばいいか分からなくなった魔女は、一つの解決策を見出しました。
 361年ごとに一度起こる世界の歪み。『終焉の審判』が起きたことによってできた世界の歪みを利用してもう一人の自分を作り出すことにしたのです。
  そして、炎の魔女と氷の魔女が生まれました。彼女たちの性格は対照的でした。炎の魔女は明るく元気で心優しい。対する氷の魔女は寂しく静かで冷たい。
 2人はいつも一緒に遊びました。互いにとって初めて同じ力を持ち同じ種族である。先に旅立たれることもなく、時の流れは一緒でした。
 そんな彼女たちは人々によく頼られていました。
 常に仲の良い魔女とは違い人間はいつも争い対立していました。
 見かねた魔女は仲介役に立ちました。明るく元気な炎の魔女は喜びに寄り添い、寂しく静かな氷の魔女は悲しみに寄り添いました。
 それは互いに大きな歪みを生んでいったのです。
 喜びに意識を向ける人々は多く、悲しむ人々の気持ちを分からない人々は蔑ろにしていきました。
 そんな数少ない人々に寄り添う氷の魔女は、その悲しみをすべて一人で背負ったのです。
 そんなある日、もう一期やってきた世界の歪みに人は約束をしました。
 力を持つ私たち2人はどちらかに寄り添わなければいけないと。互いが同じ方の肩を持ってはならないと。互いは常に対する立場に立たなければならないと。
 そして、2回目の世界の沈みで神域魔法を発動した2人は対立することを約束しました。
そして、『約束の日』を気に二人は対立し始めたのです。2人で発動した神域魔法はとても強力で、この世界に『誓約』を産み落としたのです。
 炎の魔女に付き従う人々は多く、対する氷の魔女に着くものはほとんどいませんでした。
 人々は集団になると少数を切り捨てようとするのです。
 戦争が始まったのはすぐでした。数の少ない氷の魔女は簡単に淘汰できると考えたでした。その考えは勢いを増し一瞬で炎の魔女に付き従う人々の心を燃やしました。
 一度炎のように沸き上がった人々を止める手段を炎の魔女は知りません。炎の魔女は氷の魔女に相談しようと考えましたが『誓約』がそれを許しませんでした。
 氷の魔女も同様に『誓約』が働き敵対せざる負えなくなりました。
 長い間戦争は続きました。復讐が復讐を呼び憎しみが憎しみを呼び。終わりが見えませんでした。
 互いの魔女はどちらかが勝つまでこの戦いは終わらないと考えました。
 そして迎えた3回目の世界の沈み『約束の日』。魔女は神域魔法で互いの眷属を召喚しました。
 赤騎士と青騎士。それは『誓約』従順で、誓約をより強固にするものでした。
 それに気が付いた氷の魔女は、戦争を止めるために壁の中に閉じこもりました。そして、人々の思想をコントロールするようにしたのです。
 そして、炎の魔女はそれに対抗するように『誓約』の力で自由を求め、この束縛から人々を解放しようとしました。
 そして、互いに迎えた『約束の日』。炎の魔女の神域魔法により眷属が過去に送られ、世界は書き換えられました。それは繰り返され103回目を迎え、気が付けば炎の魔女の眷属は103人に増えていました。
 そして、103回目の世界で氷の魔女が103目の炎の騎士の記憶を奪い、眷属にすることに成功したのです。それは『誓約』を破った初めての出来事でした。氷の魔女は記憶を消す際に見た赤騎士を記憶を参考に、忠誠心を植え付け青いネックレスを授けるように仕向けました。
 その赤騎士は『約束の日』にもう一度過去に飛び、世界がまた書き換わりました。しかし、世界は氷の魔女が発動した神域魔法を忘れたわけではありませんた。
 一人の赤騎士の存在で早々にこの世界の真実に気が付いた氷の魔女は世界を救うために、炎の魔女の神域魔法を防ぎました。しかし、炎の魔女がなくなり昇華起こったのです。それは、炎の魔女の眷属が炎の魔女として生まれ変わること。
 その世界に新たに103人の炎の魔女が生まれたのです。しかし、氷の魔女も104回もの神域魔法を経て強化されていました。
 両者の戦いはより熾烈を極めました。それはまるで『終焉の審判』の再演。
 長きに戦いの中、次々に炎の魔女は負けていきました。そして、最後に残った炎の魔女が104人目の『誓約』を破ったあの騎士だったのです。彼女は、その戦いでついに『誓約』を克服し『始終の魔女』へ昇華したのです。
 この世に再び再臨した『始終の魔女』は、この繰り返された輪廻を断ち切ったのでした。
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登場人物紹介

アデリーナ (主人公)

魔女の眷属として召喚された騎士 誇り高く凛々しく正義感が強い

ブル―のことが好き

ブルー・デ・メルロ

魔女の眷属といて召喚された騎士 感情の起伏が薄く口数が少ない

アデリーナを気にかけている

シルビア・デ・メルロ

氷の魔女 ラベンダーノヨテ聖域国の女王

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