41.台北101の展望台にて

文字数 1,210文字

台北101の展望台行きのエレベータのある受付に戻る。いったりきたりと、我ながら二度手間が著しいなと内心苦笑する。

受付の列に並び、展望台行のチケットを購入する。さすがに有名な観光施設なだけあって、稚拙な英語でも普通にやり取りすることが出来た。ただ、どういうわけか、会計を終えて、チケットを受け取り謝謝と言って、立ち去った後で、何か受付のお姉さんが何事かを大きめの声で話している。謝謝がどうだの、と言っているように聞こえる。

それが、自分に対する言葉なのでは、と少し動揺する。何か無礼を働いてしまったのだろうか。でも咄嗟のことだったし、呼び止める風でもなかったので、そのまま立ち去ってしまう。勘違いだったらよいのだが、あのような場面で謝謝というのは間違いだったりするのだろうか。

少しもやもやしながら、エレベータ乗り場の列に並ぶ。途中、観光写真を撮ってくれるサービスをやっているらしい。前の客の流れからして、全員撮影する想定なのかなと思っていたが、こちらが一人と見るや否や、案内のお姉さんは「写真は必要ですか」と聞いてきたので「大丈夫です」と断ってしまう。

エレベータにはさほど待たずに乗ることが出来た。エレベータはぐんぐんと昇っていく。乗っている間には、エレベータの筐体内は暗くなり、台北101の紹介と、星空を模したアニメーションが流れる。

それほど待たずして、展示室にたどり着いた。今自分は地上約400mの高度にいるんだなと、少し頭がバグるような気もする。エレベータの先は、当然ながらガラス張りとなっていて、外の景色を見ることが出来る。流石に有名な観光スポットなだけに、日本人の観光客も多く、そこかしこで日本語の会話が聞こえてくる。

ぐるりと展望台を回りながら、外の景色を楽しむ。ああ、あそこが松山空港か。あのあたりが今日歩いてきたところ。故宮博物院と思しき建物が見えたり、まだ訪れていないが面白そうな建物が見えたりする。

もう一つ上の階に挙がると、外に出れるようになっていた。高い構造物にさえぎられて外の景色を見ることは出来なかったが、とても風が強く、また地上400mの高さに生身の身体があることを想像すると足がすくんでしまい、あまり長くはいられなかった。

外の景色を一通り楽しんだ後、塔の中央の展示室に向かう。そこには黄色い巨大な球体、いや正確には球体ではなく段々がついた提灯のような形状の物体がワイヤーで天井から吊るされて安置されている。付近にはそれを模したマスコットキャラクターがいた。この物体はダンパーと呼ばれるもので、高層建築物の耐風性、耐震性を高める機構とのこと。よく見ると、確かに僅かに揺れているように見える。

一通り見るべきものは見た。しかし、少し疲れてしまった。ここまでほとんど休憩をとっていない。それに、まだ鼎泰豊の予約時間にもまだ余裕がある。付近に座れるところがあったので、何をすることもなくぼおっとして休んだ。
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