30.大鶏排は重すぎる

文字数 1,171文字

付近を散策している内に、大鶏排を売っている店を見つける。観光客と思しき人が列を成している。ここにしようと思ったが、店先で客が受け取った商品を見て、尻込みする。あまりにもでかい。手のひら二つ分ぐらいの大きさはありそうだ。肉を薄くして焼いているので見た目ほどに重くはないと聞いたことはあるが、衣の部分で相当カロリーが上乗せされているだろう。もうそこそこ食べてしまっている中で、1人で本当に食べきれるだろうか。客の方も、グループやカップルで一つ買っていたりする。

少しの逡巡の後、まあ何とかなるだろうと列に並ぶことにした。なんとなく周囲の様子を見ながら自分の番を待つ。ふと目にしたものに、面白そうな屋台があった。リアルなカエルの絵が描かれているのだが、そこで何か飲み物が売られている。その飲み物には緑や黒色のつぶつぶを客が選んで入れることが出来るらしい。タピオカミルクティー、みたいな感じなのだろうか。ただ、それにカエルの絵を付けて食欲が増進されるのだろうか。まんまカエルの卵じゃないか。アピールの仕方それでいいのだろうか。などと不要な心配をする。ただ、客がちらほらと現れて飲み物を買っていくあたり、まるでダメってことはなさそうだ。滋養強壮のイメージがつくのだろうか。

そんなことを見たり考えたりしている内に、自分の番がくる。どうやら、香辛料入りと無しが選べるらしい。まあ、あった方がいいかなと香辛料入りを選ぶ。前の客に倣って、「スパイシーの方一つください」と注文する。値段は60元だった。既に揚げあがったものを味付けし、紙袋に入れ、さらにビニル袋に入れて渡してくれた。やはりずっしりと重い。

座れる場所を見つけて、大鶏排もといでっかい台湾唐揚げにかぶりつく。思った以上に香辛料が効いていて辛い上に、揚げたてだったこともあり、結構口の中がしんどい。だが、これは見た目通りに美味しい。サクサクとした衣はしっかりと味がついており、薄く延ばされているとはいえ、しっかり肉を感じることが出来る。惜しむらくは、ここにビールが無いことだった。これはビールにあう味だ。まあともかく、これなら、ちゃんと食べきれるかもしれない。

だが、やはり半分ぐらいまで食べ進めたところで、お腹がいっぱいになってくる。のみならず、少し胃もたれがしてきた。これは食べきれない。あとは、持ち帰ってホテルで食べることにしよう。ビールも買って帰ろう。

しかし、私は少し悲しい気分になった。お腹が一杯はわかる。でも胃もたれか。だんだんと油ものを受け付けない身体になりつつあるのかもしれない。年は取りたくないものだ。今できることは今のうちにやっておかないと、後で後悔することになるかもしれない。大鶏排ならまだいいが、もっといろんな事に対して言えるはずだ。そんなことを考えながら、台北駅行の電車に乗った。

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