34.ここは池袋か秋葉原か

文字数 639文字

当初懸念していたお腹の調子はいったん問題なさそうだ。このまま、かつて城壁があったであろうところに沿って南下していく。

それほど時間もかからないうちに、明らかに若者向けといった雰囲気のエリアにたどり着く。このあたりが西門一帯ということだろう。まだ午前ということもあって、道行く人は少なく、静かではあったが、通りに見える広告ポスターは軒並みアニメ調のキャラクターや、ゲームの登場キャラクターのものだった。ゲームセンターや、パステルカラーのポップな印象の店なども見える。映画館と思しき建物もある。

ぱっと見の印象は、日本でいうところの池袋や秋葉原といった雰囲気である。台湾の若者が遊ぼうという話をしたならば、このあたりに集まったりするんだろうか。時間帯が時間帯だけに、人の姿はまばらだけれど。

少しの親近感を覚えながらも、その距離は遠く、さらに見えない壁の向こうにある。しがない旅行者の自分はその生活を垣間見ながらも、その実態に触れることは無く旅を続けるほかないのだ。なんて、よくわからない感傷を感じてみたりする。

さて、ここかららは南東の方向に足を進めて、総統府や中正紀念堂などを見るつもりだ。現在位置を確かめるために、交差点の隅にある観光地図を何となく眺めていたら、少し見慣れた文字列を発見する。西本願寺。なんというか、京都にありそうなお寺である。おそらく日本統治時代にたてられたお寺なのだろうとは思う。とはいえ、海外で故郷を思わせる文字列を見たことが面白く、思わず写真に撮ってしまった。
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