45.九份

文字数 830文字

九份の街を行く。思った以上に観光客でひしめいていて、なかなか自由には動けない。少し立ち止まって写真を撮る人もいれば、ふと足を止めて立ち並んだ店の商品を物色する人もいる。私も人の流れに身をゆだねながら、街の一々を見まわした。

本当にいろいろな店がある。入口付近で見かけたように、タロイモ団子や豆花といった甘味があれば、つんとする臭いを放つ臭豆腐があったり、茶を売る店に地元の人が使いそうなレトロな食堂もある。ありがちな観光客向けのギフトショップもある。各店の軒先には九份と書かれた赤提灯がぶら下がっている。ただ、まだ日が出ているので火は灯っていない。各店から日除け、雨除けの幕が道にせり出していて、道はトンネルか、あるいはつぎはぎだらけのアーケードのような印象だ。

道は右に曲がったり左に曲がったり階段を上がったり。道はだいたい4人横に並べるかぐらいに狭く、頭上も幕や屋根でおおわれて人も多くまったく先が見通せず、まるで迷路だった。自分はいったい今どこにいるのだろう。少し不安になりながらも、道を進んでいく。そうしているうちに、山の麓が見通せる少し開けた場所に出た。休憩所のようにもなっている。少し歩き疲れてしまって、いったん付近のベンチに腰を下ろした。そして、改めて地図を確認する。

そもそも街の雰囲気を堪能しようと思っていた程度なので、特段目当ての何かがあるわけではない。今歩いてきたところで、半分ぐらいは歩けたようだった。まだ行っていないところはこのあたり、そして今自分はこのあたり。そんな風に現在位置と目的地を確認する。とりあえず、上の方に行ってみよう。来た道を引き返せば、街の上の方に出られるはずだ。

そう考えて、引き返す。人がごった返していて気付かなかったが、確かに上に上る階段があり、そこに上っていく。このあたりが一番栄えているところなのか、人の密度が高く、移動に難儀する。ましてや階段。人が二人並べるかどうかぐらいの幅だ。転ばないように気を付けなければ。
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