33.迪化街へ

文字数 985文字

迪化街に向かう前に、台北駅近くに北門という観光スポットがあるらしいので寄っていく。日本統治以前の台湾市を囲む城壁の北にあった門で、承恩門とも呼ばれているとのこと。上半分が赤く、下半分が石積みとなっている。周囲はちょっとした広間になっていて、清朝時代の歴史の案内があった。城壁はすべて取り壊されて、北門だけが残っている。

城壁に囲まれていた区域が、昔から行政の中心地帯となっているようだ。反対に、北門から北に向かうと、かつて大稲埕「ダーダオチェン」と呼ばれた貿易の中心地があり、そこに迪化街がある。

北門を背に北の方へと歩いていく。今日も今日とて朝からとても暑い。既に汗だくだ。しばらくは室内に入る予定もなく、しばらくは暑さとの闘いが続きそうだ。

騎楼の下、何台もバイクが並んだ整備屋や、ちょっとした商店、店先で談笑する老夫婦を横目に見ながら進んでいく。人だかりができていてなんだろう視線を向けると、露天が連なった市場があったりする。

このあたりだろうかと足を止めてみる。特段何か目当てがあるわけでもない。軽く街歩きができればよかったぐらいだ。あるいはまだ先なのか。しかし、時間的にも、そろそろ戻る必要がある。少し地図を見ると、若干場所が違ったらしく、今いる大通りの2本西の地区だったらしい。

大通りを左にまがり、さらに左に曲がる。そして、南下していく。しばらくすると、ちょっといい雰囲気の赤レンガの街が見えてきた。

今まで見てきた騎楼とは趣が異なり、赤いレンガでできた歩道にいくつものアーチがかかっている。ただ単純に梁が渡されているところもある一方で、精巧に花や植物、馬をかたどった透かし彫りの天井があったりなどする。そこには赤い横長の提灯がいくつか下げられているのだが、それが西洋風赤レンガ建築の中に添えられて、東洋と西洋の交流を垣間見る。この手の東洋と西洋が交差する建築物は好きだ。

まだ9時を多少回ったくらいの時間帯。開いている店は少ない。記号や文字が余白多めにちりばめられた「無口」なる居酒屋風のお店が少し気になったりした。きっと面白い店に違いないと思う。開店時に来ることが出来ないのが残念だ。

そのほか、薬屋や昭和浪漫がどうとか書かれた店などを見て異郷に不思議なノスタルジーを感じながら、南へ南へと足を進めていく。そうしているうちに、北門のある大通りまで戻ってこられたようだ。
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