14.夕飯に迷う

文字数 1,829文字

宿に荷物を預けて身軽になったところで、夕飯に向かうことにした。もう夕飯にはいい時間で、あちらこちで屋台が出ている。食べ物屋も多く見える。ただ、さすがに初日からどローカルなところで食べるのは厳しいものがある。どこか、観光客が入りやすそうなところはないだろうか。

そう思って宿の周辺をうろついていたが、なかなか手頃なところが無い。それなら駅の方に行けば何かあるだろうと、来た道を戻って台北駅へ向かう。あの大きな建物のどこかに、それっぽいところがあるだろう。

正面の入り口から台北駅に入る。お土産屋さんや総菜屋さんがあるエリアを抜けると、広い吹き抜けになっているホールに出た。自分から見て左手では、いくつかの出店があり、お土産を売っているようだった。少し驚いたのは、中央から右手に向かっては、何もないところに、人々が地べたに座っていることだった。電車か人かを待っているのだろうか。ただ、あまり日本では見ない光景だなと思った。たぶん、日本だったら皆立って待っているだろう。そうでなくとも、屋内のただっぴろい空間で、腰を下ろすという観念が、自分に無い気がする。もちろん、良いということも悪いということもない。ただ新鮮に目に映った。

吹き抜け部分の2階を見てみると、食事をしているような人が見える。あのあたりなら、何かめぼしい店が見つけられるかもしれない。

エスカレータで2階に上がる。狙いはあたっていたようで、レストラン街になっていた。今日は、ここで済ませるとしよう。しかし、何を食べるべきか。色んな店があった。中華料理から、天ぷらやうどん、ラーメンといった日本食、フードコートや洋風のレストランなど。ここにきて日本食を食べようという気にはなれないので、それ以外で探す。

ごく一般的といった雰囲気の中華料理店を見つける。値段も手ごろだし、店先に出ているメニューにも日本語が書かれている。ここなら何とかなるだろう。とこの店で夕飯をとることにした。ただ、どうやって店に入って、注文すればいいのだろう、と考えてしまうと、店に入るのを躊躇してしまう。ここにきて何を弱気になっているのだ。

意を決して、入り口に進む。スタッフのおばさんが気づいて、台湾語で何事かを話しかけてきた。よくわからなかったので、咄嗟に右手の人差し指を「一人です」というように立てた。おばさんは無言で頷くと、席に案内してくれた。少しほっとしながら、他の席を見てみる。カジュアルな中華料理屋といった感じで、若い人からお年寄りまで広い年齢層の客が食事をしている。話される会話を聞く限り、自分のような外国人はいなさそうだった。

席についてメニューと、それから鉛筆のようなものを渡される。これは何かに使うのだろうか。よくわからなかったが、とりあえず受け取った。さて、何を食べようか。標準的なものが食べたいな。しばらく思案した後で、結局エビチャーハンと空心菜の炒め物を注文した。手を挙げて店員さんを呼ぶ。そして、これとこれをお願いしますと身振りで伝える。すると、店員さんはメニューに鉛筆のようなもので、注文したものに直接〇をつけて持ち帰っていた。ああ、それはメニューに直接書き込む用のものか。毎回消しているのだろうか。そんなことを考える。

本当はビールが欲しかったのだが、メニューに無かった。外飲みは台湾では一般的ではないのだろうか。後で調べたところ、台湾ではお酒が飲めない人が多いらしく、そもそもアルコールはあまり飲まないとのこと。だとすると、台湾ビールは誰をターゲットにしたものなんだろうか。

そんなことを考えながら、少し待っていると、注文した料理が運ばれてくる。エビチャーハンと空心菜の炒め物。特段日本で食べるものと変わるところはなく、普通のおいしさだった。ただ、やはりビールが欲しい。宿に帰る前にビールを買って帰ろう。

料理が揃った段階で、伝票をもらっていたので、それをもってレジに向かう。その途中で、前菜が置かれた冷蔵庫を見つける。そこにビールも置かれていた。そこで思い出す。台湾の料理屋では、前菜は客に勝手に持って行ってあとで会計する形式の店がある、ということを。もしかすると、これがまさしくそれだったのかもしれない。まあ、いずれにしても、既に十分はお腹は膨れていたので、不要だったのだが。ただ、ビールが飲めたかもしれない、という点では少し後悔。

お会計は270台湾ドル。日本円で1300円ぐらい。まあ、旅行だしこんなもんか。
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