5.待ち時間

文字数 701文字

ちょっとしたハプニングはあったものの、搭乗時間まではまだまだ時間がある。とりあえず付近をうろうろしてみる。当然のことながら、外国の人がたくさんいる。平日の朝ということもあって、日本人は少な目な印象。いや、円安で海外に行こうという人が減っているからなのだろうか。

まだ朝食を食べていなかったので、何か食べておいた方がよいかもしれない。せっかくの休日だし、ビールの一杯でもと思ったが、機内で尿意を催すのもつらいのでやめておく。結局、これから日本食はしばらく食べないだろうということと、それほどお腹が空いていなかったことから、コンビニでおにぎりと緑茶を買ってすませた。

あと30分ほど。もともと旅支度が十分ではなかったので、今の内に台湾の情報収集や簡単な中国語を確認しておくことにする。『これはいくらですか』『これを一つください』『ありがとう』とりあえずそんなところか。あとは、台湾の歴史や文化について書かれた新書を読み進めたりする。本当は旅に出る前に読み切ってしまったが、なかなか思った通りにはいかない。

その中には日本の植民地支配時代のことも書かれていて、それを読み進めると苛烈な支配と弾圧、それらへの抵抗の歴史が書かれていたりする。これは少し意外なことだった。台湾は親日国で、今の発展は日本の植民地時代の産業の興隆のおかげであり、昔を懐かしむ人も多い、なんていう言説をよく聞くものだから、これはいったいどういうことなのだろうかと疑問に思う。そう簡単に説明のつくものではない歴史や感情があるのだろう。そのあたりの事情に思いを馳せると、今まで特段興味を持っていなかった台湾という国について、俄然興味が湧いてきた。
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