12.地下鉄に乗る

文字数 1,545文字

道を間違っているのではないだろうか。そんな不安をいだきながら、たまにグーグルマップを確認しつつ、道を進んでいく。だんだんと活気のあるエリアに近づいてきたようで、街の様子が少し変わっていく。中国語の看板がそこかしこに出ている。人の往来が多くなってくる。そして、なんとなく雑多な感じが出てくる。歩道も広々としたものから、道路の両側の建物の1階部分をくり抜いた小さなアーケードのようなところを進むようになっていく。そこには、自転車やバイクが止められていたり、簡単な屋台のようなものが張られていたりする。そこで商売をしている人もいれば、家族と思しき人と談笑している人もいる。後で調べたが、これは中国語で騎楼、台湾語で亭仔脚と呼ばれる構造らしい。日差しを避けられるのはうれしいことだ。ただ、いろいろなものが置かれていいたりするので、ぐねぐねと避けながら前へと進んでいく。

もう夕方に近い時刻だというのに、暑さはまるで収まる気配がない。少しだれてきてしまって、早くホテルで休みたい気分になってくる。当初目指していた忠孝復興駅はまだ見えない。距離と時間からそろそろついてもいいはずなのだが。なんて思っていたらちゃんと到着したので一安心。

あと1時間ほど歩けば徒歩でもホテルまで行けないことはなさそうだが、さすがに疲れた。それに地下鉄事情も確かめておいた方がいいだろう。

地上の交差点付近にあった入口から階段を下りて地下鉄へ。事前の下調べをしたところ、日本でいうところのSUICAやPASMOのような悠遊カードというものがあるらしい。バスにもコンビニにも使えるというので、それを使おうと考えている。ただ、初回だけはあえて普通に切符を買ってみよう。

改札口の付近に自動券売機を見つける。記憶が曖昧になっているが、英語か日本語表示ができたので、ディスプレイが支持するままに二駅先の台北駅までの切符を買う。いや、切符ではないか。硬貨を投入して券売機から出てきたのは、500円玉ぐらいの大きさで2,3センチほどの厚みのある丸いプラスチックの物体だった。トークン、と呼べばいいのだろうか。どうやら、これを改札口にかざせばよいらしい。

改札口。忠孝復興駅は文湖線と、自分がこれから乗ろうとしている板門線の乗換駅のようで、かなり人でごった返している。何となく、日本の飯田橋とか、そんな位置づけの駅なんだろうかという印象を持つ。人の流れに乗るように、改札口に入った。ちょっとドキドキしながらトークンを、改札の読み取り部分と思しきところに充てる。ちょっと不安になるような間のあと、OKっぽい表示が出たのでそのまま進む。若干反応が遅いような感じがする。

プラットフォームは月台と書くらしい。なんで月なんだろう。その由来が少し気になった。

ちょうど夕方時で帰宅ラッシュなのか、たくさんの人が並んでいる。背中のリュックやスーツケースが邪魔になりやしないだろうかとおどおどしながら、その一つに並んだ。

電車が来る。結構満員だ。乗れるかどうかが心配になったが、ぎりぎりなんとか乗れた。しかし、満員電車の風習が分からないのが怖い。日本だったら黙って奥に押し込むように乗ってしまうけれど、それがそのまま通用するわけない。下手なことをしてトラブルになってしまったら問題だ。ただ、そんな心配をするほどの込み具合ではなかったので少し安心する。

車内は特段日本と大きく異なる部分は感じなかったのだが、両側面にドアのある部分の中央に、おそらく立つ人向けであろうポールが一本立っているのが、少し新鮮だった。ほか、台湾の電車では改札内は電車も含めて飲食禁止で、見つかると罰金を受けるとのこと。普段、割とどこでも水を飲んでいるので、うっかりやってしまわないように意識する。
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