9.入国審査

文字数 1,094文字

飛行機から降りて、人の流れのままに進んでいく。最初にまず入国審査があるはず。と、ここで入国カードのようなものがあったはずと思い出す。あれは、機内に配られるものではなかっただろうか。特段声掛けされていなかったと思う。

が、そういえば最後の方でCAさんが何か呼びかけながら回っていたことを思い出す。何も手にしていなかったから気づかなかったが、あの時に必要な人は申告してもらう形だったのかもしれない。中国語のアナウンスだったので全くわからなかった。

入国審査場につく。あたりを見渡して、海外向けのゲートの位置を確認。そしてさらに、入国カードが置かれている場所も確認した。大学生ぐらいの日本人の数人グループが、あれこれ言いながら、カードを記入している。彼らの間から、すみませんと一声かけてカードを一つもらった。奥の方の席に座って、カードの記入事項欄を埋めていく。一通り埋めたが、いまいち何を埋めたらよいのやらわからない項目があって、思案に暮れていると、見知らぬ誰かがカードをのぞき込んでくる。どうしようどう応対しようと緊張しながら、ちらりと目線を向けてみると、空港のスタッフだった。「この記載で問題無い。あそこのゲートから入れる」のようなことを言われたので、しどろもどろに感謝しながらゲートに向かう。

カードの記入にまごついていたせいか、そもそも外国人の入国が少ないのか、それほど待たずに審査に入れた。頭の中で質問に対する回答を思い返しながら、前へと進む。審査官は、60歳ぐらいの見た目のおじちゃんだった。やせぎすで、不愛想な表情。険しい顔、というよりはほとんど寝てるんじゃないかというぐらいに目を細めていた。

目線を合わせながら「ハロー」と声を掛けて進む。するとおじちゃんは、何も言わずに手を差し出してくる。パスポートを出せということだろう。パスポートを窓口に差し出す。ペラペラとめくって、ちらちらとこっちを見てくる。言葉が通じない前提の対応に、ほっとするような、拍子抜けのような。そこの読み取り機に指を押し付けろというので、言う通りにする。もちろんこれも身振りで指示された。人差し指をつけたら、違う違う親指だ、というようなジェスチャーをされたので、慌てて親指を押し付ける。ちゃんと読み取れたらしい。ドンと、スタンプを押すと、やはり不愛想に無言でパスポートをよこしてきた。センキューと声を掛けて通過する。

道なりに進んで、飛行場のロビーへ。現地のガイドと思しき人たちが、名前の書かれた旗やら紙やらをもって待っている。私には待ち合わせる人はいない。なんとなくちらちらと様子をうかがいながら、人込みを抜けた。
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