風待山 7
文字数 853文字
小早川と須藤に頼んでみるか……。
副島は久しぶりに森へと続く道を歩き始めた。
千夏がここに来たのは、アパートの郵便受けに入っていた一通の封筒からだった。
封筒には施設の案内が入っていた。
ちょうど、仕事を辞めてから毎日をただ過ごしていることに淋しさも感じ始めていたころだったので、そのタイミングで届いたチラシに興味を持って、この施設をたずねたのである。
ここには自分以外に誰もいない。ただ、千夏と同じくらいの年齢だと思われる女性と、やはり同年代と思われる男性が二人が時折、どこからともなく訪ねてきて、しばらくおしゃべりをしていく。
ここにいて私は彼らの話を聞くのが私の仕事のようなものだった。彼らが訪ねて来ない時、私はこの施設の片付けや掃除をすることになっているが、そうは言ってもそういった仕事が毎日あるわけでもない。
こんな寂しい山のふもとのこの施設に訪ねてくるあの二人がどういう人たちなのか、千夏は知らない。なんとなく聞くのが憚られたからだ。
二人の話には昔話が多い。
共通の思い出があるらしい。千夏にはわからないが、懐かしがって二人はよく昔の話をしている。
「あなたが来てくれてうれしい」
小早川さんという女性の方の訪問者がお茶を飲みながら話してくれた。
「私達、どこかで繋がっていると思うんだ」
須藤という男の方の訪問者が言う。
――繋がり?
玄関の郵便受けに郵便が届いた音がした。
千夏がとってきた。
表書きには「副島のおじいちゃんへ」と書いてあった。
誰だろう?副島さんって?
送り主は「松井つばき」と書いてあった。
小早川さんと須藤さんはその封筒を見て、なんだかそわっとした気がした。二人は目配せをして、それから下を向いた。
「副島君に届いたんだ」
須藤さんが、君付けて呼んだ。
「つばきさん、元気でやってるのかな」
小早川さんも、二人を知っているようだ。
「副島君も、たまには降りてくればいいのに」
2人は窓から外を見つめた。千夏には裏手にある風待山に向かって、ゆらゆらと2人の影が揺らいて見えた。
副島は久しぶりに森へと続く道を歩き始めた。
千夏がここに来たのは、アパートの郵便受けに入っていた一通の封筒からだった。
封筒には施設の案内が入っていた。
ちょうど、仕事を辞めてから毎日をただ過ごしていることに淋しさも感じ始めていたころだったので、そのタイミングで届いたチラシに興味を持って、この施設をたずねたのである。
ここには自分以外に誰もいない。ただ、千夏と同じくらいの年齢だと思われる女性と、やはり同年代と思われる男性が二人が時折、どこからともなく訪ねてきて、しばらくおしゃべりをしていく。
ここにいて私は彼らの話を聞くのが私の仕事のようなものだった。彼らが訪ねて来ない時、私はこの施設の片付けや掃除をすることになっているが、そうは言ってもそういった仕事が毎日あるわけでもない。
こんな寂しい山のふもとのこの施設に訪ねてくるあの二人がどういう人たちなのか、千夏は知らない。なんとなく聞くのが憚られたからだ。
二人の話には昔話が多い。
共通の思い出があるらしい。千夏にはわからないが、懐かしがって二人はよく昔の話をしている。
「あなたが来てくれてうれしい」
小早川さんという女性の方の訪問者がお茶を飲みながら話してくれた。
「私達、どこかで繋がっていると思うんだ」
須藤という男の方の訪問者が言う。
――繋がり?
玄関の郵便受けに郵便が届いた音がした。
千夏がとってきた。
表書きには「副島のおじいちゃんへ」と書いてあった。
誰だろう?副島さんって?
送り主は「松井つばき」と書いてあった。
小早川さんと須藤さんはその封筒を見て、なんだかそわっとした気がした。二人は目配せをして、それから下を向いた。
「副島君に届いたんだ」
須藤さんが、君付けて呼んだ。
「つばきさん、元気でやってるのかな」
小早川さんも、二人を知っているようだ。
「副島君も、たまには降りてくればいいのに」
2人は窓から外を見つめた。千夏には裏手にある風待山に向かって、ゆらゆらと2人の影が揺らいて見えた。