第7話 ひとり

文字数 1,068文字

 夕方のテレビはつまらない。
 リモコンでチャンネルを全部変えてみたが見たいと思う番組はやってなくて仕方なくテレビを消した。
昨日買ってきた食べ残しのポテトチップスの袋を持ってきて食べた。もう、少し湿気ている。スマホをいじりながら食べていると玄関のドアが大きな音を立てて開いて、どかどかとさとるが入ってきた。
……静かに歩けよ。隣のババアが起きるだろ!
 未亜はこのさとるという子がいとこだと思うことにどこか抵抗を感じる。全然聞かされていなかった。突然未亜たちの住むこの狭い部屋に転がり込んで一緒に暮らし始めてから、自分にこんないとこがいたことを知った。
「暫く頼むわ」
 遠くの街で暮らしていたのに、母親の看病を口実にして母親の弟だと名乗る男とこのさとるがこの街に帰ってきた。母のあけみとは子どもの頃に離れたという。隣で寝ているババアが母とこの叔父の兄妹を虐待していたらしい。母からすると、娘には聞かせたくない話だったのだろう。一切この叔父の話は聞いてなかった。
 さとるは小学4年生だが学校には行っていない。前の学校では行っていたと言うが、叔父のせいで行けなくなったとさとるは言っていた。
「あいつがちゃんと俺のことを見ないから」
 さとるが言うにはどこかの施設に入れられてしばらくそこにいたと言う。学校に行っていたときもつまらないからいつも好きなことをして暴れていたと、どうでもいいようなことを自慢げに話してくれた。
 そう言う私も学校なんてつまらないから、授業をサボって好きなことしてる。
 さとるがポテトチップスの袋に手を入れて食べようとした。
「ふざけんな」
 未亜が怒るとさとるは私たちの持っていたその袋を奪って隣のババアの部屋に入ってしまった。さとるたちはその部屋に布団を敷いて寝ている。
 私からすると、よくあんなところにいられるなあと思う。ただでさえ、気分が悪くなるような部屋である。祖母は黙ったまま寝ているが、時折りしもの世話を頼んでくる。面倒だが、それをしないと母親がネチネチとしつこく小言を言うから、仕方なく未亜がやっているが、そんなことをしているなんて、誰にも知られたくない。学校の友達に知られたら、もう学校には行けない。
 叔父が帰って来た。レジ袋に夕飯にするスーパーの惣菜と缶ビールが入っているのが見えた。
−–この人、昼間なにやってんだ?
「未亜も食べるか?」
−–食べるわけないだろ。
 未亜が無視してスマホに目を落とすと叔父はさとると同じようににどかどかと隣の部屋に入って行った。
 スマホの画面には松井もみじからのLINEが入っていた。


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