(77)ルターと魔女

文字数 845文字

ルターは、ローマ・カトリック教会(主に教皇庁)の腐敗と堕落を指摘し、ローマ・カトリックは真の宗教から乖離していると、告発した。
教皇による立法ではなく、キリストであるイエスの愛による救済によっての行動を求めた。
聖書の原点である、「ヘブライ語の聖書」に教えの原点があるとしたのである。

その、ルターの「教理問答」中に、「キリスト」は63回、「悪魔」は67回出て来る。
有名な話になるが、ルターは、ヴィッツテンベルグ(中部ドイツのザクセン地方北部の小都市)
の僧院で悪魔の騒ぐ声にいつも悩まされていた。(現代人から見れば、単なる耳鳴り症である)
また、ヴィッツテンベルグ城のルターの居室の壁に、彼が悪魔に向かってインキ壺を投げつけた時の黒いシミが、今でも残る。

ルターは、人間の「自由意志」と罪の意識を結び付けた。
罪を犯す、あるいは神の意に沿った行動を行うかは、人間の「自由意志」が決定する、としたのである。
この論理によれば、魔女になるのは、本人の「自由意志」に基づくのであって、「神の意思に背く」ことになることから、魔女に対して容赦する考えは、全く持たなかった。

ルターの「食卓談話」には、
「魔女には、何の同情も持たない、皆殺しにしたいと思う」とあるし、事実、ヴィッツテンベルグ城において魔女の火刑が実施されている。

そのルターの考えが、やがて新旧で互いを魔女視する残酷な抗争(魔女狩り)に発展したのであるが、「自分の奉ずる信条と教理から、少しでも外れれば,死刑を持って罰する」という、不寛容と迫害の精神は、新旧両教徒も同じだったのである。

ガリレオが、「聖書の言葉は、ひとつの比喩である」と、冷静な科学者的な言葉で、聖書を評価したが、ルターは、地動説を完全否定した。
ルターは、コペルニクスも、「なりあがりの星占師」とし、罵倒した。
宗教改革者において、神の言葉は、「完全無欠の一つの解釈」でしか、あり得てはならなかったのである。
また、ルターは、その「完全無欠の一つの解釈」も、ルターの解釈以外は、認めなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み