(62)魔女集会③背徳の饗宴

文字数 1,771文字

悪魔との契約儀式が終了すると、魔女集会は、賑やかな饗宴に移行する。
「悪魔が用意した食事は、見た目も汚らしく、匂いも酷い。吐き気を催すほどでした」
(魔女集会参加を「認めた」女性の証言)

また、背徳の饗宴であって、嬰児供儀、秘薬、乱交が主なテーマであることは、どの魔女裁判にも、共通している。

尚、魔女集会(サバト)では、「幼児殺し」「人肉喰い」の告白が残っている。

例1)魔女マリ・ド・サンスの告白。

「私は、自ら、子供を何人も殺しました」
「私は、ある者たちの髪の毛を引き抜きました」
「他の人たちの心臓と、こめかみを針で突き刺しました」
「また、他の者たちを、便所や、かまどに投げ入れました」
「さらに私は、別の人たちを、狼、ライオン、蛇、その他の動物に投げ与え、食べさせました」
「私は、彼らの腕、足、陰部を切ってつるしました」
「私は、ある者を、塩のように細かく切り刻みました」
「また、他の者の脳天を壁にぶつけて、潰しました」
「そして他の者の皮を剝ぎました」

例2)1582年、フランスの異端審問官セバスチャン・ミカエリス(ドミニコ会士)の、南フランスのアヴィニョンにおける、18人の男女の魔女の判決文から

被告は、
「悪魔を真の神と呼び、自分の要求を拒絶した者や気に入らない者に報復するために、彼の助力を求めた」
「悪魔に教えられた魔術と呪文を持って人畜に危害を加え、多くの新生児を殺害し、あるいは悪魔の助けを借りて乳不足、病弱、重疾患などで人々を悩ませた」
「自分自身の子を魔術により窒息させたうえに、刺し殺した」
「その後、夜に乗じてひそかに墓地からその死骸を掘り出し、魔女集会に運んだ。そして玉座に座る魔王にその死骸を捧げ、その脂肪を絞り出して保存し、首と手足を切り離して胴体を焼肉とし、悪魔の命ずるままに、忌まわしくも、それを食べた」
「そのうえ男魔女は女色魔と、女の魔女は男色魔と性交した。色魔との冷たい性交により、被告は言語道断な獣姦の罪を犯した」

食事の後は、悪魔とのダンスになる。
魔女たち一同は、手をつなぎ円形になり踊るが、全員が円の中心に対して背を向ける。
つまり、他人と顏を合わせないのが特徴である。

ダンス終了後は、魔女の饗宴は、色魔と魔女の無差別性交に移る。
女の魔女には、男色魔。男の魔女には女色魔。(色魔は、小悪魔の中でも最下層の地位)
尚、「魔王」と交わったと告白する魔女の供述も多い。
また、無差別乱交で、近親相姦の記録も、魔女裁判官により、詳細に残されている。

何人かの魔女は、カエルの頭を切り、クモや灌木の樹皮・髄とともに粉にして、人を殺し、穀物を枯らすための秘薬を作った。

また、別の魔女は、裁判にかけられた時に、自供しないための「黙秘薬」を、「黒い栗の練り粉と洗礼前の子供の肝臓」で作っていたとの「目撃談」もある。

魔女集会に出席した新参の魔女は、悪魔と結託したしるしとして、身体に魔女マークをつけられる。
魔女裁判では証拠として、重要な意味を持つことになるが、形状は様々である。
ウサギ、カエルの足、クモ、仔犬、リスネズミ等が、身体の隠れた部分につけられた。
男はまぶたの裏、脇の下、唇、肩、尻他、女は乳房または陰部等も含まれた。

魔女裁判では、マークを発見するために、裁判官は魔女を全裸にした。
頭髪、腋毛、陰毛も全て剃り落とし、マークを探した。
魔女マークの部分は感覚がなく、大きな針で深く刺されても苦痛を感じないので、身体中を針で刺し、魔女マークを探したのである。(被疑者の苦痛や流血には、何も配慮を行わなかった)

以上のような魔女集会は、実は、ローマ・カトリック教会と、そのお抱え学者(神学者、悪魔学者)による空想の産物である。
それを過酷な拷問により、(無理やり捕らえた)魔女嫌疑者に、強制的に「自白」させたことが、実態である。

その背景には、14世紀半ばから後半にかけてヨーロッパを襲ったペストをはじめとする数々の疫病被害、イスラム教国家との戦争で負けたこと、等の強い社会的ストレスがある。
その強い社会的ストレスの格好のスケープゴートとして、夥しい人数の「魔女嫌疑者」を逮捕し、殺したのである。

そして、この世の災厄は、全て魔女が作った毒薬や呪術によるものとして、その恐怖と憎悪のテンションを増幅させ、無責任で悪賢しさに満ちた狂気の魔女狩りが行われた。

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