水無月     満月

文字数 742文字

今日交わした細やかな約束

彼としたバスケと会話

彼のしぐさ



全てが何度も何度も

頭の中を駆け巡っている



小雨が止み腰窓を開けると

遠くの田んぼから

蛙達の鳴き声がここまで聞こえてきた

最初の頃

これを聞いた時

都会暮らしの私には衝撃だった

自分が新天地に来たのだと

改めて実感したものだ



風が入り込み

カーテンを大きく揺らし

私の長い髪をなびかす



夜空を覆う

くすんだ雲が

ゆっくりと動いていき

ところどころの隙間から

星が見え

寝静まった住宅街の屋根越しには

光環を放つ巨大な満月が現れた



月の回りでぼんやりと放たれる

虹のような光環は

まるで人の心を映し出しているかのようだ



それは私の心なのだろうか?



淡くぼんやりしていながらも

スペクトルを秘めている輝き

儚くも脆い

それでいて

いつまでも消える事ができない光



風が強まり

音を立てながら

月光で青白く塗られた部屋に入り込んできた

私はうっとりしながら

細い腰窓に座り窓枠に背中を預ける



部屋の暗いフローリングには

四角く切り取られた明るみに

腕を膝に回した私のシルエットが

奥の壁にまで伸びていた

カーテンの薄い影と共に

パジャマの襟首とロングヘアーのシルエットが

静かに踊る




月夜の住宅街を眺める

住居の壁は

ほのかに照らされ

ぽつりぽつりと点在する電柱の外灯と玄関門照明の無機質な光は

静かに人の睡眠を見守っているかのようだ



暗い庭木が木の葉を囀ずらせ舞っていた

月の姿を反射する水たまりが波紋を作り

幾重もの木の葉が風に乗って落下していく

それはまるで

不思議な妖精達の乱舞を連想させた



雨上がりの空気は冷たく

頬に触れると

水分を含んだ分子が

肌を潤していくのを実感した



私は瞳を閉じ

この瞬間を胸に刻み付けていた



世界は寝静まり

現実の隙間に実在する

幻影に包み込まれた穏やかな時間



私は静かに待つ

梅雨の終わりと

新しい季節の始まりを……


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登場人物紹介

北里 舞 


本作の主人公  

地方住宅街に越してきた 

普通の高校一年だが 

自分の感受性を大事にしている


新田 俊 


舞が買い物帰りに旧住宅街で遭遇する  

バスケをこよなく愛する同級生  

クラスの女子にそれなりにモテる

栗澤   麻都佳 


学校近くのコンビニでバイトする 

舞の同級生にして親友


月成 


麻都佳経由で知り合う事になる

舞の宿敵の同級生 

可愛らしい外見の男子で 

女装してもバレない

織原   香月 


秋冬編から登場 

舞の中学時代の親友だった 

同じ高校に通うも...... 


常磐     景織子 


秋冬編から登場 

香月の親友の美人 

人とあまり関わりたがらない

柏木 

 

どうも景織子が好きらしい別クラス男子


基宏 


舞の中学生時代の思い出に 

出てくる男子

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