皐月 木漏れ日
文字数 813文字
「どうぞ、どうぞ」
「どうぞ、どうぞ」
一瞬の沈黙の後
再び言葉が被る
片手を差しのべる仕草も同時で
まるでコントだ
「いえ、そちらからどうぞ」
私は丁寧に話し顔を傾けた
「いえ、いえ、どうぞ」
彼もまた紳士に身をひく
どうやら
らちが明かない
私は小さく唸り
舌で唇の端を湿らせながら
彼を上目遣いでながめた
「私、自分の名前一度も口にしてないんだけど」
「確かにあの時、自己紹介は無かったよな」
「何、超能力者?」
「えっ、お前、マジでそんなの信じてるの?」
皮肉で指さしたつもりが
思わぬしっぺ返しを受けて
軽くテンションが下がる
「もういいわ、それより、まさか新田 悛?」
「何、今更聞いてるんだよ、同じクラスメイトだろ」
「嘘っ!?」
今日の出来事でこれが一番驚いた
さっきの口づけの記憶も吹っ飛ぶ
衝撃的な発言に
私の目は見開いたままで
口が塞がらずにいる
「気が付かないのも無理ないか、俺、北里の斜め後ろ側だし」
「この間は私の事知ってたの?」
どうにか掠れた声を押しだし
落ち着く事に専念する
「あの時は正直まだ知らなかった」
彼は私から目を逸らし
校舎の二階窓を眺めていた
何故か顔を赤らめている
「翌日、授業中お前見てびっくりしたよ、で、先生に名前呼ばれてわかったんだ」
まるで彼の話を締めくくるように
次の授業を告げるチャイムが
鳴り響いた
「やばいっ!」
私と彼は顔を見合せ走り出した
「ところで、何でベンチで寝てたの?」
玄関で上履きに履き替える時
彼が尋ねてきた
「そりゃあ、新田くんを探し疲れたからよ」
「俺を?」
階段を急いで駆け上がる
「牛乳のお礼が言いたかったの!」
急に前で彼が立ち止まり振り返ったので
バランスを崩した私は背中から落ちそうになった
咄嗟に彼の差し出す手にしがみつき
反動で抱きつく
彼の身体の温かさが肌に伝わってくる
再び心臓が高まった
「大丈夫か?」
「……あ、ありがとう」
その後
会話はなく
教室のドアを開けると
科目担当教師が欠席で自習になっていた
私と彼は顔を見合せ
疲れたため息をついた
「どうぞ、どうぞ」
一瞬の沈黙の後
再び言葉が被る
片手を差しのべる仕草も同時で
まるでコントだ
「いえ、そちらからどうぞ」
私は丁寧に話し顔を傾けた
「いえ、いえ、どうぞ」
彼もまた紳士に身をひく
どうやら
らちが明かない
私は小さく唸り
舌で唇の端を湿らせながら
彼を上目遣いでながめた
「私、自分の名前一度も口にしてないんだけど」
「確かにあの時、自己紹介は無かったよな」
「何、超能力者?」
「えっ、お前、マジでそんなの信じてるの?」
皮肉で指さしたつもりが
思わぬしっぺ返しを受けて
軽くテンションが下がる
「もういいわ、それより、まさか新田 悛?」
「何、今更聞いてるんだよ、同じクラスメイトだろ」
「嘘っ!?」
今日の出来事でこれが一番驚いた
さっきの口づけの記憶も吹っ飛ぶ
衝撃的な発言に
私の目は見開いたままで
口が塞がらずにいる
「気が付かないのも無理ないか、俺、北里の斜め後ろ側だし」
「この間は私の事知ってたの?」
どうにか掠れた声を押しだし
落ち着く事に専念する
「あの時は正直まだ知らなかった」
彼は私から目を逸らし
校舎の二階窓を眺めていた
何故か顔を赤らめている
「翌日、授業中お前見てびっくりしたよ、で、先生に名前呼ばれてわかったんだ」
まるで彼の話を締めくくるように
次の授業を告げるチャイムが
鳴り響いた
「やばいっ!」
私と彼は顔を見合せ走り出した
「ところで、何でベンチで寝てたの?」
玄関で上履きに履き替える時
彼が尋ねてきた
「そりゃあ、新田くんを探し疲れたからよ」
「俺を?」
階段を急いで駆け上がる
「牛乳のお礼が言いたかったの!」
急に前で彼が立ち止まり振り返ったので
バランスを崩した私は背中から落ちそうになった
咄嗟に彼の差し出す手にしがみつき
反動で抱きつく
彼の身体の温かさが肌に伝わってくる
再び心臓が高まった
「大丈夫か?」
「……あ、ありがとう」
その後
会話はなく
教室のドアを開けると
科目担当教師が欠席で自習になっていた
私と彼は顔を見合せ
疲れたため息をついた