皐月   黄昏

文字数 801文字

突然

彼の持つボールは弾かれ

バウンドするのも束の間

電光石火の速さで

ドリブルシュートを決められる



……この私に



「ああ、スカッとしたぁ、レモンソーダ飲んだ時よりスカッとしたぁ」



何が起きたか理解できず

きょとんとしている彼の前で

私はボールを拾うと

背を低くし

ボールを地面に打ち鳴らし始めた

その機敏な動作に

彼は察したようだった



「なるほどね」

彼は頭をかいて鼻で笑った

「口喧嘩に勝てないから、1or1による報復に出るという訳か」

私は答える変わりに

挑発的に可愛らしい笑顔をつくってみせた



自分でもガキっぽいと思ったが

また牛乳を買いに

戻らなければならないのかと考えると

ここで

憂さを晴らさなければ

どうにかなりそうだった



「バスケ歴は?」

「中学の時は陸上部よ」

「なら相手が悪い。自慢じゃないが俺はバスケ部レギュラーだった。遊び程度の技術なら返り討ちがオチだ」

言いつつも彼は重心を下げて

目線の位置を合わせてきた

間近に迫った彼の目付きが

更にすっと細くなると

空気の振動が変わった気がした

一瞬の隙をつかれ

私の手元からボールが奪われ

彼の動きを目で追った時には

既に華麗なダンクで

ゴールを決められていた

「いくらなんでも、ナメすぎだろ」

反論の言葉が思いつかず

私はボールをそそくさと取りに行き

手に取ると考え込んだ

太陽は姿を隠し

地平線の空に赤みだけが残っている

回りの電柱の付属ライトに

光が静かに灯る

家の並ぶ畑に面した生活道路は

薄暗く寂しさが漂ってきた

「そっちが負けた場合、牛乳買いに行ってもらうわよ」

「おいおい、何でそうなるんだ」

「お互いの主張を言い合ったって、らちが明かないでしょ。これでこの件は綺麗さっぱり解決しましょう」

彼にパスし

ルールに則って

すぐに受けとる

「それじゃあ、俺が勝ったらどうするんだ、俺は牛乳なんて飲みたくない」

「ジュースおごるわ、それで文句ないでしょ」

「まぁ、いいか。一人より相手がいた方が面白いしな。ハンデやろうか?」

「結構!」 

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

北里 舞 


本作の主人公  

地方住宅街に越してきた 

普通の高校一年だが 

自分の感受性を大事にしている


新田 俊 


舞が買い物帰りに旧住宅街で遭遇する  

バスケをこよなく愛する同級生  

クラスの女子にそれなりにモテる

栗澤   麻都佳 


学校近くのコンビニでバイトする 

舞の同級生にして親友


月成 


麻都佳経由で知り合う事になる

舞の宿敵の同級生 

可愛らしい外見の男子で 

女装してもバレない

織原   香月 


秋冬編から登場 

舞の中学時代の親友だった 

同じ高校に通うも...... 


常磐     景織子 


秋冬編から登場 

香月の親友の美人 

人とあまり関わりたがらない

柏木 

 

どうも景織子が好きらしい別クラス男子


基宏 


舞の中学生時代の思い出に 

出てくる男子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み