皐月   黄昏

文字数 625文字

隣り町とを隔てた幾重に連なる山々

幼い日々

都市部から眺めていた

地平線のシルエットは

今では

生い茂る木々の一本一本が

区別出来るほど間近に感じられる



山頂にそびえる鉄塔の送電線の合間で

薄雲のかかった夕日が

オレンジに揺れていた

その

やわらかい射光は

落葉樹林に光と影の部分を強調させ

赤と水色が混じる空で

鉄塔が線画のように暗さを

際立たす



張り巡らされた電線の下には

昔からの住民が住む

民家がぽつりぽつりと点在する

町の中心部に近付くに連れ

地味な色の屋根越しに

市役所やスーパーが目立ち始めた



帰宅時なのか

急に車の数が増え

私の暮らす進興住宅地へ走って帰る子供たちや

犬を散歩させる定年男性

錆び付いたガードレールに

腰かけて会話する中学生の男女が

見受けられた



道路に面した

名も知れぬ大きな木々の片アーチを潜ると

向かい風が冷たく変わり

微かな

木の葉のさえずりが聞こえてきた



私は

鮮やかに光を反射する

新緑の香りをかいだ



濁りのない空気が呼吸器官を通り抜け

体内に満たされると

言い様のないくらい

心が浄化されていくのがわかる



だが完全に満足はしていなかった

何かが足りない

何かを欲している



この深く青みを増してゆく空

こんじきと朱色に染まる白雲を見上げると

自然と

すれ違う人々に目がいってしまう



もやもやした焦りと期待感

希望と切なさが

交互に押し寄せてくる

この気持ち

無性に自身の身体に手を回したくなり

足りないものを補いたくなる



やがて信号が現れ

空の色は

増えてきた建物の壁に阻まれ見えなくなった

私はその先のスーパーへ急ぐ 

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登場人物紹介

北里 舞 


本作の主人公  

地方住宅街に越してきた 

普通の高校一年だが 

自分の感受性を大事にしている


新田 俊 


舞が買い物帰りに旧住宅街で遭遇する  

バスケをこよなく愛する同級生  

クラスの女子にそれなりにモテる

栗澤   麻都佳 


学校近くのコンビニでバイトする 

舞の同級生にして親友


月成 


麻都佳経由で知り合う事になる

舞の宿敵の同級生 

可愛らしい外見の男子で 

女装してもバレない

織原   香月 


秋冬編から登場 

舞の中学時代の親友だった 

同じ高校に通うも...... 


常磐     景織子 


秋冬編から登場 

香月の親友の美人 

人とあまり関わりたがらない

柏木 

 

どうも景織子が好きらしい別クラス男子


基宏 


舞の中学生時代の思い出に 

出てくる男子

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