水無月    雨宿り

文字数 813文字

突然の夕立に

私達はたまらず

玄関ドアの屋根下に避難した

「こんなに早く雨降るなんて、天気予報あてにならないわね」

私は見上げた雨雲に向かって顔をしかめた

口調はいつになく非難がましい



雨の勢いはやわらかく

傘をささなくても

少しの間なら

それほど濡れる事はない

ただ

自宅に戻るまでには

どう急いでも十五分はかかる

「バスケなんかに付き合わせて悪かったな北里」

「新田くんは悪くないって」

責任を感じたのか

彼の低い声には後悔が滲み出ていた

慌てて首と両手を振った私は

先月との態度の差に

自分自身

驚きと戸惑いを抱いていた



どうしてか

皮肉を言いたい気分ではない

それどろこか

嫌なキャラだと

新田に思われる事をおそれている



「そういえばさ、なんで新田くんは高校のバスケ部入らないの?」

何か別の話題に変えようとした私はすぐに後悔した

彼の横顔が次第に険しくなっていく

そういえば

この間先輩にもその事で

何か言われてた気がする



「あっ、ゴメン、話したくないなら無理に話さなくていいよ」

「中学時代の決勝戦でさ……」



電柱のふもとで萎れている

紫のアサガオを見据えながら

彼は静かに語り始めた

「俺と西島のチームは有利にゲームを進め相手チームより大幅にリードしていた」



私も彼の見るアサガオに目を向ける



「あとは防御にさえ専念すれば楽して勝利、でも俺は満足出来なかったんだよ、相手チームに1or1ではいつも勝てない凄い奴がいて、そいつと対決したくてしょうがなかった」

当時の状況を思い出しているのだろう

彼は無意識に握りこぶりを作り

舌打ちをした

「俺はどんどん攻めてシュートを入れていった、が、一度シュートを外し、それからリバウンドで取ったソイツの反撃が始まったんだ、そいつのバスケセンスは天才的でどんな逆境からでも立ち直るメンタル面も持ち合わせている」

自嘲したように彼は鼻で笑った

「それからのそいつの勢いは凄まじく、結果、相手チームの逆転勝利、俺のワガママで負けちまったからな、責任をとってやめた訳さ」


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登場人物紹介

北里 舞 


本作の主人公  

地方住宅街に越してきた 

普通の高校一年だが 

自分の感受性を大事にしている


新田 俊 


舞が買い物帰りに旧住宅街で遭遇する  

バスケをこよなく愛する同級生  

クラスの女子にそれなりにモテる

栗澤   麻都佳 


学校近くのコンビニでバイトする 

舞の同級生にして親友


月成 


麻都佳経由で知り合う事になる

舞の宿敵の同級生 

可愛らしい外見の男子で 

女装してもバレない

織原   香月 


秋冬編から登場 

舞の中学時代の親友だった 

同じ高校に通うも...... 


常磐     景織子 


秋冬編から登場 

香月の親友の美人 

人とあまり関わりたがらない

柏木 

 

どうも景織子が好きらしい別クラス男子


基宏 


舞の中学生時代の思い出に 

出てくる男子

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